企業が利益を出す要因の46%は外部環境にある・・・・ハ-バ-ドビジネススクールが「企業収益の源泉」を分析した研究成果の一例。 いくらあがいても企業経営は外部環境の影響を大きく受ける。 必然、企業経営者は外部環境の理解に努めなければなりません。


アベノミクスで日本経済が大きく変化している中、外部環境の変化を少しでも理解できたらと著書を手に取りました。 新政権の経済政策であるアベノミクスは著書である浜田エ-ル大学教授の影響が大きいのは広く知られたところ。 ”アベノミクスではなくハマダミクス”だと言われているとの話も聞きます。


浜田氏の主張は2008年のリ-マンショック以降長らく続く”デフレ経済と円高”からの脱却が日本経済の復活に必要であり、それは日銀の金融緩和で実現できるというもの。 これまでの日銀は、デフレの原因は主に人口減少にあるとものと考え、金融政策では改善できないと主張を続けてきた・・・・・ゆえに日銀の無策ぶりが今日のデフレ経済を招いてしまったと。


日銀の金融緩和とは、(単純化して申し上げると)通貨市場における円の流通量を増やすこと。 円の供給量が増えると円の価値が下がり円安へ振れ、日本の主要産業である輸出企業の競争力が上る。 結果、株高につながり景気が回復に向かうというもの。  勿論、円安に進めばメ-カ-の国産回帰は進み、雇用は増え内需(消費)の向上にもつながる。


今のところ、円安と株高が進み金融緩和政策はうまく機能している様子に見えます。 勿論、アベノミクスの第二、第三の矢である公共投資と成長産業戦略がうまく軌道にのってこそ、本格的な日本経済の復活へ道筋がつくのでしょうが、苦境に陥っている電機産業(ソニー・パナソニック・シャ-プ等)などにとっては一服つける局面に入ったように思います。 


リ-マンショック後、円はドルに対し30%上昇し、韓国ウオンは30%安となり、日本の電機メ-カ-は海外市場において実に60%の価格ハンディを背負ってサムソンなど韓国勢と戦ってきたわけです。 低迷の原因は為替だけではないと思いますが、如何せん60%の価格ハンディは企業努力だけでは対処できない面もあるかと思います。


さて、円安はどこまで続くのか? 現在の購買力平価を考えると¥95/USドルが妥当とかいろいろな見方が出ているようですが、突き抜けて行きそうな勢いです。 しかし、円が弱くなれば、輸入青果物の商社である弊社としては、仕入れ価格が上る厳しい状態。 中期的には、日本の景気が上向くと購買力が強くなり、原価上昇分をオフセット(相殺)する時が来るのかもしれませんが、当面は忍耐が続きそうです。 


私個人としては”デフレ経済”からは早く脱却して欲しいという気持ちが強いです。 所得の減少や産業の空洞化を止めるなどの深刻な問題の他に、長いデフレ経済下で『安いことが(最も)良いことだ』という観念が消費者に刷り込まれてしまったのではと懸念しています。 勿論、価格が安いことは、商品やサ-ビスの大きな価値だとは認めますが、あまりに行き過ぎたのではないかと。 ここ数年のマスコミの企業ドキュメンタリ-も牛丼チェ-ン・居酒屋チェ-ン・100円ショップ・ディスカウントストアなどデフレ経済を象徴する熾烈な価格競争を扱うものが実に多かった。 


私が唯一担当しているアメリカンチェリ-においても、韓国や中国が大粒の良品をどんどん買っていくのに日本市場ではあまり人気がない。 品質と価格のバランスから見ると、大粒品の方が(価格は高いが)通常品(レギュラ-サイズ)より明らかに商品価値は高いのに・・・海外のサプライヤーも日本の低価格志向には首をひねっている。 長いデフレ経済の影響で、日本の消費者の商品価値をはかる目が曇ってしまったのではないかと・・・・ 


また、安全・安心で高品質(味・鮮度が良い)そして価格が安い・・・そんな商品は本当にあるのだろうか? 食品スキャンダル(賞味期限・産地偽装など)が根絶できないのはそういうところに原因があるのではないか・・・・。 デフレ経済を脱却することで、価格以外の価値(品質・安全/安心・健康など)が見直される、あるいはもっと評価されるのではないかと期待しています。


さて、二月に入り長くて寒い冬の終わりが近づきつつありますが、日本経済の厳冬期も終焉に向かってくれないかと願うばかり。 そして、経営本ばかりでなく経済の時流を書いた本も時折読まねばと・・・・春の陽気溢れる南国から戻る機内で思ったところでありました。





アメリカは日本経済の復活を知っている/講談社

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