ライブ旅 滋賀県 その3 | 石橋光のメジャー7th

石橋光のメジャー7th

幼少の頃よりギターを弾き始め、中学生の頃より作詞、作曲活動をスタート。
2007年春、大学卒業後、本格的な音楽活動を開始。
現在楽曲制作活動と共に、ライブ活動を積極的に行っています。

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ちなみに左下の影、僕です。


滋賀県、大津駅前、


俺、さっき泣いちゃいました。


今夜は誰も止まってくれなかったため、近くに座ってなんとなくチロチロ気にしてくれてたおばあちゃんに話かけたんです。そしたら



近頃の若者は夢がない。あんたもないやろ!


という第一声。


これは、楽な相手ではないと思った。


そして意を決して



俺:いや、、俺はあるよ。



おば:どんな夢や?



またもめっちゃためらった。
恥ずかしかった。


でも、若者全般が夢がないと思われてるなんていやだった。



俺:言うのちょっと恥ずかしいけど、俺は絶対プロのミュージシャンになりたい。ただプロになるんじゃない。プロになって、日本中の音楽を盛り上げたい。



おば:あんた珍しいわ。



俺:みんな口に出さないだけで、みんな熱いよ!



おば:でも出せないんやろ。



俺:確かに出せないけど。




おば:あんた何をしてるん?



俺:日本中を回って、出会ったお客さんの手拍子を録音してるんだ。自分の歌を聴いてくれた人の手拍子を録るために足を運んでる。今日は22県目だよ。でも全然止まってくれないんだ。



おば:(頷きながら)滋賀の人はな、あんまし音楽とかには興味薄いで。あたしは滋賀に来て一年経つけどな、みんな音楽には興味薄いで。あたしはアイポッドで音楽聴いてんねんで?みんなはな、それ見てあたしのこと孤独やゆうねん。でもな、あたしはな、だれかの陰口やら世間話するよか一人で歌聴いとる方がええねん。だからな、あたしはな、滋賀に来てからはな、誰とも話してへん。みんなに孤独や言われてるだけや。ホンマはな、みんなにもアイポッドの歌聞かしてやりたいけどな、みんな話しかけてこんからな、あたしもな、めんどうくさいしな、一人やねん。みんなな、落語でも聴いとるんかとか茶化すけどな、そうや、いうて嘘言うねん。ホンマはな、カーペンターズとかな、ビートルズとか聴いてんねんで?


俺:あばちゃんいくつなの?



おば:70や。


俺:アイポッド持ってるなんて機械に強いんだね。おばちゃん格好いいね。



おば:音楽はええでー。あたしのとこは息子も音楽好きでなー、ビートルズよく歌うねん。



俺:じゃあビートルズやるから聴いて!


ビートルズのblackbird演奏


おば:ええな、いやーええわ。誰の曲?



俺:ビートルズビートルズ!



おば:あービートルズやなー。ええわ、確かにええわー。


気が付くと、このおばあちゃんといると、なんか素直になれて、言葉がすらすら、恥ずかしい気持ちより先に言葉が口から出ていくのがわかった。


俺:僕がね、ビートルズが好きなのはね、今日はじめて会って年も違う僕とおばちゃんがね、ビートルズがあったからこんなに仲良くなれたからなんだよ、だから僕もビートルズみたいになりたいんだよ。



おば:ええなー



最初は、ちょっといじわるな顔で笑ってたおばあちゃん、でも気が付くと、すごく優しい顔して笑ってる。おばあちゃんが子供のころ、お父さんが厳しくて、歌に興味がない人だったこと、お母さんは歌が好きで銭湯にいったときによく一緒に歌を歌ってたんだっていう話、息子さんも歌うのが好きなんだという話、沢山話をしてくれた。


おば:親の用意してくれた座布団はな、借り物やで。いつまでも座っとったらあかん。もっとええもんにして返したらなあかん。


おば:大事なんは今日と明日やで。


おば:明日はどこに行くん?


俺:明日はね、三重だよ。


おば:そか、明日はおらんのか。これあげるわ。


ビニールに入った何かをくれた。


俺:ありがとう!


おば:明日もおったら来たけどなー。でもな、滋賀はあかんで。あたしはアイポッドの歌聴かしたくてもな、音楽聴くんは孤独や言われてな、誰にも聴かしたことないで。みんなな、あたしには適切なことしか言わんねん。


俺:そうなんだ。ねえおばちゃん、手拍子やってよ。


おば:あかんあかんこんなクソババアが一人でやったんなんか寂しいやろ。売れんでー!


俺:いや、おばちゃんやって!


おば:誰か呼んで来たろうか?一人じゃあかんのやろ。


俺:ううん、一人が大事なんだよ。おばちゃんと仲良くなったからおばちゃんのじゃなきゃ。



おば:ほな、ええよ。…あんたは売れるで。


俺:ありがとう!じゃあ行くよ、よーお!



ぱん!



俺:おばちゃん上手やん(←関西弁)!



おば:あんたの名前書いといてや。



俺:あんね、僕CD出しててね、1000円なんだけど高くなかったら、名前も書いてあるし、歌も聴けるからどうかな?


おば:ほなそれ買うわ!



俺:アイポッド入れてね!そんで誰かに聞かれたら友達の歌聴いてるって言ってね!



おば:ホンマはいくらや?あんた安く言ってるやろ。


俺:みんな同じ値段だよ!


おば:嘘や!


この会話三往復。


おば:そか、じゃあええわ。ほなサインもしてや。ここの場所と、日付入れてな。



俺:わかった☆



おば:あんたの歌、ホンマに良かったで?頑張ってな。



俺:うん!ありがとう!おばちゃん名前は?


おば:あたしは明日死ぬかもしらんからクソババアでええわ。



俺:名前は?


おば:ふみ子や。



俺:長生きしてね。長生きしなきゃだめだよ。理由なんてないよ。1日でも長く生きなきゃダメだよ。


おば:はよ売れてな!



俺:急ぐけど、売れてからも応援してくれないと困るからおばちゃんもまだまだ長生きしてね!



おば:わかった。陰ながら応援してるで。



外はすごく寒かった。
おばあちゃんは多分俺より寒かったと思う。ヒザを痛めて杖をついてるおばあちゃん。
寒かったら余計ヒザが痛むだろうな。


俺:気をつけてね、ありがとうね!


おば:楽しかったわ。ありがとうな。



俺:おばちゃん握手しよか。



おば:こんなシワシワの手としたら売れんで!ええ!ええ!



俺:それがおばちゃんの手でしょ!握手してや!



おば:そうか?ほな。



俺:気をつけて帰ってね。



おば:ありがとう。ほなな。




おばあちゃんがゆっくりゆっくり歩くのを見てた。見えなくなるまで何分もかかった。


もらったビニールの中身なにかなーって思った見てみたら、551(横浜でいう崎陽軒)の肉まんが入ってた。


お腹空いてたから、手にとったら、まだほんの少し温かかった。


美味しくて、その冷たいような温かいような肉まん食べてるときに涙が出てきた。


手拍子を頼んだ時のおばあちゃんの言葉がよみがえってきて。



おば:誰か呼んで来たろうか?



おばあちゃんが本当に喜んでくれたんだってことがその一言を思い出したときにわかった。



一年前から滋賀に来て、まだ誰とも話したりしてないって言ってたのにさ、大津の駅前で、誰か呼んでこようしてくれたんだ。



そして、あまりに寒くて、俺も引き上げ。



こんな夜もいいでしょ?



最初に、夢を隠さないで話して良かった。
おばあちゃんが言った、大事なんは今日と明日や。


おばあちゃんにとっても、明日を今日よりいい1日するための何かきっかになったらいいな。


そして、お互いにとってそうなれてると信じられる言葉たちを忘れたくなくて、ブログに書きました。


※滋賀県の皆さんは、決して音楽に興味がないとは思っていません。ノンフィクションにこだわってああやって書かせていただきました。失礼がありましたらすみません。暖かくなったらまた来ます!その時またライブ聴いて下さい☆