交通事故鑑定のお値段 その4 魔法の言葉 | 事件鑑定人のブログ@鑑定人イシバシ

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私が事件鑑定人としてこれまで経験したことを書きます。
特定を避けるため、一部、ぼかしたりフェイクもありますが、概ね実体験です。

ウチは儲かりますけど」・・・・・という魔法の言葉・・・
大抵は、冷静に戻ってくれるが逆のパターンがあった。
とある事故裁判でチト熱くなっている方からの電話・・・・・。
鑑定にまつわる相談を受けたのである。
10分程度話を聞き込んだ結果、私は鑑定不要と判断した。
係争の本質は事故態様ではなく後遺障害の評価である。
一審で次回は最終弁論。
心証は既に形成されている様に見えた事も大きい。
ここで鑑定を実施したところで効果は疑わしかった。

「鑑定の必要性は低いと思いますよ。
 ウチは儲かるんで、やれって言われればやりますが。」

と正直に感想を述べたが、相談者の反応は意外なモノだった。
交通事故鑑定を実施して欲しいとのこと。
お宅が儲かるならイイじゃないか と痛いところを突かれる。
断る魔法の言葉を逆手に取られた事にほかならない。
聞けば他の鑑定会社では全て鑑定した方がイイとの回答だったそうだ。
必要性が低いと判断したのはウチだけだったとのこと。
それで逆に弊所のことをご信頼いただいた次第である。

確かに相互に食い違いがあれば鑑定した方が良いと回答するのは当然だ。
こと、交通事故鑑定の見地に限定すれば鑑定を勧めたのは誤りではない。
しかし、訴訟という見地から見れば鑑定が必ずしも効果をもたらすとは限らないのだ。
むしろ、対抗鑑定でまとまり書けた事案があらぬ方向にいつ出すする危険も否めない。
鑑定不要の結論を出したのは訴訟を見据えてのことだった。
つまり、他の鑑定人と私とでは着眼点が異なっていただけのことである。
相談者の方には、第一審の結果を見て不満だったら鑑定を実施することで納得いただいた。

さて、第一審の結審後のことである。
先様から鑑定はやはり必要なかったとの旨の電話をいただいた。
「儲け損ないましたわぁ」 と私は返した。
電話の声は二人とも心なしか笑い声であった。