交通事故鑑定人環倫一郎について 樹崎聖先生からのお便り | 事件鑑定人のブログ@鑑定人イシバシ

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私が事件鑑定人としてこれまで経験したことを書きます。
特定を避けるため、一部、ぼかしたりフェイクもありますが、概ね実体験です。

樹崎聖先生から、フィクションとリアルの相違についてお便りを頂いたので掲載する。

端緒となった事象については次回のブログで掲載する。

 

<以下引用>

 

『交通事故鑑定人環倫一郎』は1996年から僕と梶研吾さんと描き始めた作品で、2003年にはセカンドシリーズ『R2』として完結、単行本20冊で終了した漫画です。
その後も2010年にはマンガ図書館Z(Jコミ)立ち上げの目玉作品の一本として再注目され、2017年には渋谷アップリンクでDomixモーションコミックライブと原画展も開催され、現在も多数の電子書籍として配信され、車好きやミステリー好き、あと細目好きの女性にも変わらぬ人気で読み継がれているようです。
僕自身深い愛着がある作品だし、本当っにありがたい現状だと思っています。

ですが…

「作品を読んだだけで鑑定人になったつもりで活動する者が近年出てきている」と、この度、現役の鑑定人である石橋さんより聞かされ…そこまでの影響力が!!…とちょっと誇らしい気分と同時に、大きな不安に襲われました。
交通事故は人の生死やそうした事件の判決にも関ることです。
作品の監修には元祖交通事故鑑定人である江守一郎先生(故人)にもついていただき、実際の事例を参考にして描かせていただいたものですので、決して適当に描いたわけではありません。…とはいえ、裁判で係争中の事例は作品上での使用が不可能で、元ネタとなった多くの実際の事件は1996年よりさらにずっと古いモノが多いのです。
タイヤの性能も安全基準もボディの頑強さも全然違い、ABSやエアバックも標準装備でなかった時代です。
車の物理的特性は変わらなくとも、自動車工学の科学力が現代とはすでに大きく違います。
さらに漫画ならではの…見せるためのリアリティ表現というものも作品中では多数あります。
リアルとリアリティは違います。フィクションでは本物以上に本物に見せるためにわかりやすく誇張してこそ面白くなるのです。
ドラマに置き換えるために必要な必然のリアリティとして事件を微妙に改変している部分もあります。

『交通事故鑑定人環倫一郎』を読んで自動車工学に興味を持っていただけたなら嬉しいことですが、
古い漫画の知識だけで事故鑑定し、法廷に立つなど…「ブラックジャック」を読んで人の腹をかっ捌き、頭蓋骨を開けるようなもんです。背中に薔薇を蒔きながら女の子に愛を告白するようなもんです。探偵や交通事故鑑定人に国家資格や公的な資格はいりませんが、学ぶ事なく人の役に立てる特別な仕事ができるはずがありません。
作中の環倫一郎もプロフェッサー(大学教授)ですよ。
名乗るだけでもなれてしまうというのは漫画家も同じですが、安易に名乗っていいものではありません。
雇う時にも経歴や評判を調べ、信頼できる人を選びましょう。
『交通事故鑑定人 環倫一郎』は年代物のワインを愛でるように、旧き時代もを同時に楽しんでもらえたら幸いです。
梶研吾・樹崎聖 『交通事故鑑定人 環倫一郎』 #マンガ図書館Z

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