シリーズ今だからいえる 高知白バイ事件 その4 | 事件鑑定人のブログ@鑑定人イシバシ

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私が事件鑑定人としてこれまで経験したことを書きます。
特定を避けるため、一部、ぼかしたりフェイクもありますが、概ね実体験です。

【機能しなかった監視】
現在では、事件について結審するまで事故状況の疑義について放送されることはない。

あくまでも、揺るぎない事実関係や判決要旨程度だ。
これは、放送されることで、裁判に影響を与えかねないからである。

2010年頃までは、裁判中の案件でも遺族側の主張を丸呑みした報道番組はあった。

しかし、事件が好転した事例は極めて希で、殆どが遺族側に不利な判決となっている。

最高裁で逆転無罪判決を取った事例でも、判決が出るまでは鑑定内容の報道はなかった。
勿論、私に対して水面下での取材要請はあったが、弁護人を介さない取材は断っている。
昨今のメディアは裁判に影響を与えかねない内容は報道しない。
これは、BPO・放送倫理・番組向上機構が機能し始めたからである。
番組制作サイドは、先にも述べたSNSとBPO双方の監視が機能しない状況だった。
KSBの暴走はこういった事情が介在したと思われる。
ただし、メディアの暴走は支援者の暴走を惹起させた。
何故か、刑事裁判であるにも関わらず支援者等は福島みずほや共産党と接触している。
結果、単なる物理現象である交通事故が、市民vs警察という歪んだ形に変貌していった。


【鑑定人から見た高知白バイ事件】
Ameba TV は今年の3月3日に「疑惑のブレーキ痕はなぜ裁かれないのか」を放送した。

KSBで放送された映像を再編集したもので、取材に当たった山下洋平氏も出演している。

氏は、一審で無罪と思っていたのに「まさかの有罪だった」と述べていた。

私は、6件の無罪判決を頂戴したが、無罪を狙っても有罪だったのは100件以上である。

「まさかの有罪」 という発言は、刑事裁判の現実から乖離した言葉に聞こえてしょうがない。

また、KSBはこの事件の弁護人への取材も行っているがその尺は僅かだ。
本気で無罪を取ろうという弁護士にはテレビ越しですら伝わってくる種独特なオーラがある。

白バイ事件の弁護士にはこれが感じられなかった。

あくまでも、私の私見である。

【未公開文書】

高知白バイ事件では、多くの画像や図面が支援者等によってメディアやネットに公開された。

しかし、この事件ではいまだに開示されていない文書がある。
それは、ブレーキ痕が捏造と断じて、I鑑定人が作成したこの事件の鑑定書だ。
K氏の無罪主張の根拠となった文書で、支援者のいわゆる神器である。

私は、いろいろな立場の人から高知白バイ事件についてどう思うか尋ねられた。

肯定派・否定派の双方、立場も様々で事件に関心を持った人たちである。

しかし、誰一人として無罪の根拠となった鑑定書事態を見ていない。

私が、この事件についてわからないと結論づけているのはこの鑑定書を見ていないからである。
全てが終わった今こそ、公開する時期だと思う。

【最後に】
この事件では、もう一つ特徴的な事が挙げられる。
それは、死亡事故であるにも関わらず、被害者不在であることだ。

当事者のK氏は現場で手を合わせているとメディアで述べている。

しかし、報じられるK氏の姿からは、真摯に被害者の死に向き合っているとは感じられない。

おそらく、死亡した隊員のご遺族が見ると、憤怒するだろう。

この事件では死亡した隊員には遺児等がいたがメディアは関心を寄せていない。
また、交通事故の遺族団体も同じ交通事故被害者でありながら、何ら関心をよせなかった。

むしろ、敢えて目をつむり、耳を閉じていたようにすら感じる。
メディアによって作出された警察との対立が彼らの耳目を閉じさせたように思えてならない。

死亡した白バイ隊員には、彼を幼少より慈しみ育てた両親はいる筈だ。
幼子の成長を見ることができないのは父親としてさぞかし無念だった筈だ。

そんな故人を取り巻く人々の想いにメディアのみならず、多くの関係者は目を背けてきた。
故人様には、ただ、ただ、安らかに眠って頂きたい 今は切にそう願うのみである。
 合掌