前回の続き・・・・
裁判では、被告側の撮影した事前・事故の画像が争点となった。
しかし、これら調査写真が証拠として出されたが不鮮明で判断が付きかねる。
そこで原告は裁判所に家屋の専門家による鑑定申し出を行った。
この事件では、裁判所より選任された一級建築士による鑑定が行われている。
一級建築士の鑑定結果は、工事の影響により約26万円相当の損害を認めたものだ。
第一審もその鑑定に沿った判決である。
慰謝料や弁護費用を併せ被告は原告に46万円支払えとの内容。
ちなみに、原告が請求した金額は約400万円であり、納得できる金額ではない。
さらに、鑑定費用140万円の内、約9割が原告負担となった。
これは、裁判で認められた損害額を上回る鑑定費用が原告に生じたことになる。
あくまでも市民感覚であるが、原告が上告した気持ちは判らないでもない。
他方、行政側も同様の工事で近隣からの被害の申し出を受けたことがなかった。
46万円程度とはいえ、他の苦情が惹起される危惧もあるので到底認諾できない。
その判決を受け、被告も高裁に上告したのである。
私は、行政サイドから依頼を受け、事前調査と事後調査の写真鑑定を行うこととなった。
撮影箇所は22箇所 事前と事後で検査対象画像は44枚である。
各画像に複数箇所の損傷が撮影されているため、検査対象箇所は100箇所を超えた。
ところで、鑑定費用自体は損害額に計上される性質のものである。
いわば、裁判で争う対象となり得るため、積算には細心の注意を払う。
ちなみに、鑑定実施には同型のカメラ購入や打合せ協議などの費用も含まれる。
勿論、新品で購入したカメラは検証後、売却するのであるが、この差額が請求額となる。
新品を一旦使用して手垢が付くとほぼ新品でも、売却額はため息が出るほど大幅に下落。
これらに、直接人件費や使用機器損料を積み上げて鑑定費用は積算される。
そうして積算された鑑定費用は約90万円であった。
検証箇所が他の事例に比して突出して多く、購入品もあったため高額になったのである。
→次回に続く・・・・・
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一般社団法人 法科学解析研究所 代表理事 石橋宏典