さて、私は交通事故鑑定人と認知されているが、画像鑑定人でもある。
交通事故では様々な画像を鮮明化処理したり、対象物の判定を行う。
つまり、画像解析や画像鑑定は交通事故鑑定の一分野ともいえる。
事実、私の受任件数の内、約30%は交通事故ではない画像鑑定業務だ。
今回はある画像にまつわる裁判について複数回に分けて書く。
その事件は第一審の原告は家屋の所有者で、被告は近隣で工事を行った建設会社と行政。
被告等の行った工事にまつわる振動で、原告の家屋が損壊したとの訴えである。
そもそも、工事に際しては予め周辺家屋の事前調査を行う。
これは、既に存在する家屋の経年劣化による損傷を写真撮影するものだ。
工事後に新たな損傷が生じたか否かを調査するのが事後調査という。
この事後調査で新たな損傷が見つかれば、事業損失として所有者に行政が補償する。
原告は自身の家屋に工事による損失が生じたとして建設会社と行政を訴えた。
原告の主張する損傷は、壁面に生じた亀裂や柱と壁に生じた隙間である。
亀裂といってもヘアークラックと呼ばれる髪の毛ほどの太さの亀裂だ。
よくよく注意しなければ気付かない形状と寸法である。
また、柱と壁の間に生じた隙間にしても、広いところで2mm程度。
木造モルタル構造の家屋であれば経年劣化によって不可避に生じる性質のものである。
通常であれば、建設業者は近隣からの申し出があれば真摯に対応する。
裁判になると面倒なので、申し出が怪しいものであっても、目をつぶり補修費を支払う。
訴訟にまで発展したのは、建設業者側がよくよく勘弁ならない事情があったようだ。
現に原告が提示した損害賠償請求額は400万円強。
しかし、同様の工事でそれほどの損害が生じた例はない。
また、近隣での工事で同様の損害を申し出た住民はいなかった。
通常では考えられない損害であり、訴訟だったのである。
→次回に続く・・・・・
*************************************************************
一般社団法人 法科学解析研究所 代表理事 石橋宏典