交通事故鑑定の誤解 | 事件鑑定人のブログ@鑑定人イシバシ

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私が事件鑑定人としてこれまで経験したことを書きます。
特定を避けるため、一部、ぼかしたりフェイクもありますが、概ね実体験です。

先日、鑑定の相談の依頼者から

「なんで鑑定してくれないだよぉぉぉ」

と抗議された。

 

その事例は、ドラレコで事故の状況が撮影されていた。

また、GSの防犯カメラにも事故の状況が撮影されている。

証拠収集の段階で、事故態様が審らかになった事案だ。

そもそも、鑑定の必要はどこにもない。

 

鑑定といえば調査よりも上位に捉える方が多い。

中には、弁護士ですら調査と鑑定の峻別ができていない方も少なくない。

ところが、証拠上の価値は 調査>鑑定 である。

これは、鑑定の性質に由来する。

 

先に挙げたとおり、きちんとした証拠さえあれば鑑定の必要はない。

証拠の欠落した部分を、推定していく行為が鑑定である。

出土したパーツから古代を推定していく考古学に近い。

いわば、調査に基づく客観的な証拠に対して、鑑定には鑑定人の見解が加わる。

そのため、客観的な証拠に鑑定は敵わないのである。

 

私が言うのみなんだが、テレビでは、格好のいい見栄えがする部分だけを取り上げる。

ところが、実際は膨大な資料と証拠物との睨めっこだ。

鑑定とは、地味で単調な作業の積み重ねなのである。