第一部〜投資のシミュレーション
1)質問1、投資のシミュレーションとは?
司会
シミュレーションとは、具体的に何をすれば良いのでしょうか?
↓
【答え】
投資でどのくらい儲かるかを、予め計算することです。過去のデータに基づいて、年間の収益率を決め、計算します。
複利計算をするのですが、今日はインターネットにあるシミュレーターを使ってみましょう。
あくまで期待値でしかありませんが、これをすることで、心の準備ができます。
2)質問2、シミュレーションの前提
司会
分かりました。
それでは、今回は金融庁のシミュレーターを使ってみましょう。
シミュレーターは、あくまで机上計算です。将来の利益を約束するものではございません。注意して利用しましょう。
↓
【答え】
はい。
それではまず、今回の前提条件を説明します。
月10万円、10年、投資すると仮定します。税金が発生しない新NISAを使うことにしましょう。
投資対象は、比較のため米国株と世界債券とします。個別の株や債券は、金額や手続きの面で難しいので、投資信託とします。
過去1年の実際の数値を使ってみます。
米国株の代表として、SP500でシミュレーションしてみましょう。
SP500とは、米国の主要企業500社の株価を集計して作った指数です。
過去1年の平均収益率は、42%です。
司会
すごい数値ですね。
ハイ。米国の経済は好調が続いています。大きな数値となりますが、リアルの数値でやりましょう。
もう一つの世界債券は、14%です。
世界債券とは、世界各国の国債や社債に投資した場合の成績を数値化したものです。
司会
これも凄い数値ですね。
質問3、円安の影響
はい。これは債券が上がったというより、円安の影響があると思います。日本から外国に投資するので、円安の影響を受けます。
司会
円安の影響とは、何ですか?
↓
【答え】
例えば、
保有期間中に1ドル140円の時に、10,000ドル分の投資信託を買ったとします。手数料は考えないことにしましょう。
140万円を支払い、10,000ドルを保有することになります。 1年後、その投資信託は値上がりも値下がりもせず、10,000ドルだったとします。
一方、為替は1ドル140円から150円になったとします。その投資信託を売却したら幾らになりますか?
司会
ああ、1万ドル掛ける150円で、150万円になりますね。円安で資産が10万円増えていますね!
ハイ。
今回用いる数値には、そのような円安の影響が含まれているとお考え下さい。
140円が150円になったのなら、ざっと7%の為替による儲けがあることになります。
いずれにせよ、本物の数値でいきましょう。
それでは、シミュレーターを開いてください。
金融庁シミュレーターの実演
司会
はい。
わかりました。
開きます。
(ここから実演)
↓
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240518/07/ishi-atama/c5/2c/j/o0486108015440087215.jpg?caw=800)
米国株(SP500) 平均リターン42%
月10万円、10年
1200万円+16246万円
=17446万円
こんなシミュレーション結果が出てきました!
司会
とてもすごい。大儲けですね。
世界債券も同様に行います。
世界債券平均リターン14%
月10万円、10年
1200万円+1390万円
=2590万円
今起きていること
イデコと新NISAはどちらがお得ですか?
↓
【答え】
今、日本や世界の株式市場で起きていることは、こういうことです。皆さん、米国株がいいぞ、ということでドルがどんどん米国に流れ込むわけです。
今の状況ですと、米国株やドルが強すぎて、現実ばなれした数値が出てきます。
そこで、過去5年の平均リターンを使って、毎月10万円を積み立てて運用するとどうなるかみてみましょう。
SP500 過去5年の平均リターン 21%
元本 1200万円
収益 2811万円
計 4011万円
世界債券 過去5年の平均リターン 5%
元本 1200万円
収益 352万円
計 1552万円
司会
シミュレーションはわかりました。
こうやって実際の数値で、疑似体験ができる訳ですね。
投資経験がない人には、有効だと思います。
ハイ。
しかしあくまでこれは、過去の数値に基づく疑似体験でしかありません。
リスク
今度はリスクを加味しましょう。
司会
リスクとは、なんでしょうか?
↓
【答え】
良い質問です。
一般に、リスクとは危険な事が起きる可能性の事です。介護の世界では、杖をつくことで転倒のリスクを減らす、などというふうに使われます。危険性という意味ですね。
ところが経済の世界では、ちょっと違います。価格が変動することをリスクと言います。株価などか上がることも、広い意味ではリスクに含まれるのです。
投資信託なら投資信託の値段が変わる可能性がある事がリスクです。
これを価格変動リスクといいます。
先ほど見た円安などの為替による変動は為替変動リスクです。
司会
これ以外にも、戦争、地震、国家財政や金融機関の破綻など様々なリスクがありますね。
↓
はい。そうです。
ここでは主に価格変動リスクを取り上げましょう。
投資信託のデータの中にリスク、あるいは標準偏差という項目があります。
米国株(SP500)の過去5年における リスクは17%です。
17%価格が変動する可能性があります。
21% ±17%=4%〜38% です。
下に変動する場合はほとんど儲けがなくなってしまうのが分かります。
もしこれに急激な為替変動が加われば、マイナスになることも在ります。これがいわゆる元本割れという状況です。
それでは、SP500を4%でシミュレーションしてみて下さい。
司会
はい、わかりました。
月10万円で10年を4% でシミュレーションします。
下振れした場合は、
元本 1200万円
収益 272万円
計 1472万円となります。
なるほど~。
10年後にこの結果ならがっかりですね
世界債券もみてみましょうか?
↓
世界債券の過去5年のリスクは7%です。
過去5年の平均収益は5%ですから、
5±7%=-2%〜12%
です。
金融庁のシミュレーターは、強気でマイナスを受け付けていないようです(笑)
2%を入力すると、127万円となります。
元本1200万円-127万円
= 1073万円
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240518/07/ishi-atama/75/2c/j/o0631108015440088550.jpg?caw=800)
以下は、表にまとめました。
コチラをご覧下さい。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240518/07/ishi-atama/ac/f5/j/o1066055215440088224.jpg?caw=800)
ここまでのまとめ
ここまでお話しして、感じたことをまとめます。
最初の過去1年の平均収益率は42%でした。投資初心者に限らず、多くの人が、このような直近の数値をみて、投資しているのではないでしょうか?
多くの投資家が期待して、米国株に群がる姿が見えるようです。みんな目先のリターンしか考えていない。億り人になるとか言って。
余剰資金でやるのならそれも良いでしょう。
でも老後資金の場合はこれはリスクが高すぎます。高齢で投資に失敗すれば、取り返すのは、なかなか難しいです。心身ともに、キツイものがあります。
自分に取って都合が良い指数だけでなく、色々なデータを集めましょう。今回の例では、過去5年の収益率を取り上げました。
司会
人間は、どうしても自分に都合の良い情報だけを集めがちですね。
私が知っている野球ファンは、ひいきのチームが負けると、新聞は一切読まないそうです。
そのような人は、認知バイアスに陥っていゆと言います。投資では儲けたいという欲望が、情報の幅を狭めてしまうのです。
次回は6/12水曜 20時30分から21時30分までです。
テーマは、国債に投資するべきか?を予定しています。
第二部、 イデコの税金
第一部では、新NISAのシミュレーターを使って、投資のシミュレーションをしました。
第二部では、イデコと比較してシミュレーションしてみます。新NISAになかった税金を意識しましょう。
特に中級者の方は、投資の利益に対する税金を予めイメージしておくことが大切です。
それでは参ります。
次のような人をシミュレーションしてみましょう。
(45歳、年収500万円、所得税10%、住民税10%、退職金無し、月1万円で20年間、年平均リターン3% )
・新NISAで投資を行った場合
元本240+収益88=328万円
・イデコで投資を行った場合
元本240+収益88=328万円
24+24=48万円節税
イデコ受取時の税金
イデコ受け取り時に税金
受け取り方は、3種類
1)一時金
2)年金
3)一時金と年金の併用
一時金は退職所得
退職所得控除がある。(お得)
(収入 - 退職所得控除)×1/2 = 退職所得
20年間イデコを行った場合
40万円×20年= 800万円までは課税されない。
したがって、
元本240+収益88=328万円
を一時金で受け取れば非課税です。
もし、イデコ解約で900万円が手に入ったら50万円が退職所得。他の所得と合計して、所得税、住民税を計算する。
所得税、住民税の税率が10%なら、イデコ受け取り時の税金は5万円となります。
他の退職所得(退職金)と時期が重なり、退職所得控除を超えると、税金が大きくなります。
年金で受け取る場合は雑所得となります。
国民年金も、同様に雑所得です。
65歳以上は、国民年金と合せて年間110万円まで非課税。非課税を超えれば、所得税と住民税が、かかります。
年金定期便をみて、自分の年金受け取り予想額を確認しましょう。
自分の運用額を計算し、受け取り方を決めておきます。
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※ここに書かれているのは、わいずオフィス代表FPの知見に基づく一般論です。例にあげている実際の金融商品の原稿作成時点のデータです。実際の投資で同様のリターンが得られることを一切保証しません。投資は、ご自身の判断に基づいて行って下さい。また、このブログでは特定の金融商品を推奨、勧誘することは一切ございません。
(ファイナンシャルプランナー、日本FP協会CFP認定者、介護職員向け実務者研修を修了)