第1626段 道の辺のお地蔵様を助けて
昔、男ありけり。今も男あり。
その男 令和2年9月の上旬
信州は安曇野の塩の道を歩きけり。
夏草のおどろが中に倒れ伏したる
お地蔵様を見つけ
歌を
地震(なゐ)にてか 道に転(まろ)べる 地蔵さま
いたましければ いだき助けぬ
地震のせいか はたまた悪戯のせいかは定かならねども
元の場所とおぼしき 石の台の上へと戻し安置し
懇ろに掌を合はせ祷り去りけり。
而して「鶴の恩返し」ならねども
「お地蔵様の恩返し」と
若く美しき尼僧が後日、
宿を求めてその男の自宅に来るやもと
期待をいだきけり。