新編・伊勢物語 第九百二十六段 シアトルの中心街(前半) 星原二郎第九百二十六段 シアトルの中心街(前半) 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成十五年六月中旬 気の合ふ野球好きの友と アメリカはシアトルへとイチローの試合を見ることだけを 目的に行きけり。行きて試合の始まるまでの時間を持て余し シアトルの中心街ダウンタウンを歩き 歌を 高層の ビル群見上げ この国の 三百年の 歴史思へり 高層の ビルのはたてに 日系の 人らの拝む タコマ富士見ゆ 万博の 記念の塔に 御(お)上(のぼ)りは 列なし高みに 昇らむと待つ