第四百七十七段 空海の聖地
昔、男ありけり。今も男ありけり。
その男、平成二十九年春弥生
四国は土佐の室戸岬に近き
御厨人窟へと行きけり。
御厨人窟はかの弘法大師こと
空海が若き日に修行せし巌谷なり。
巌谷より見ゆるは空と海のみにて
悟りを開きし故に号を「空海」とぞ申しける。
そこにて歌を
われもまた 御厨人窟ここに 留まりて
身を修しなば 得るものあらむ
と詠み 空海と同じ様に悟りをと願ふは
あまりにも烏滸がましく せめて彼の
十分の一、否よ百分の一でもあやかりたきものと
願ひけり。
しかして、その地に留まり修行せしかは
詳らかならず。