第三百八十三段 わが祖父のこと
昔、男ありけり。今も男ありけり。
その男、平成二十八年の年の瀬迫り頃
空家となりて久しき実家の整理に行きけり。
祖父の形見の品々あれば 歌を
たまたまに ふるさとに荷を 片付けゐれば
祖父の卒業 証書いで来ぬ
わが祖父の 生まれしところ 安城と
聞きし覚えの かすかに浮かぶ
碧海郡 平貴村とふ 地名にて
探さむとして 地図を拡げぬ
師走はや 半ばとなりて せはしなき
日日にしあれど 尋ね当てたり
と 詠み 格段に可愛いがられし
祖父のルーツの地を探さむと思ひけり。