第三百六十五段 おほかみ挽歌 其の弐
昔、男ありけり。今も男ありけり。
その男、日本狼の絶滅にいたく心を痛め
更に歌を
塚の上に 冬さり来たり 包まむと
雪はしんしん 夜もすがら降る
四村山 いづこにか永遠の 眠りにぞ
つきしおほかみの なきがらあらむ
大口の 貴神と 崇められ
恐れられしが ここに死絶ゆ
山深く 獲物も多く ゐしならむに
絶えたる訳はと 問ひて自を責む
博物館に 剥製となり 飾らるるより
狼なれば 野晒しぞふさはし
と 詠み 絶滅の最大の原因である「人の取りたる
狼に対する行動」を糾弾し怒りを表しけり。