新編・伊勢物語 第百九十九段 中宮温泉 星原二郎第百九十九段 中宮温泉 昔、男ありけり。 今も男あり。 その男、平成二十八年の初夏、加賀の国 中宮温泉へと行き歌を 胃と腸に 良きいで湯とぞ 聞きつれば 胃下垂病みし 父を思へり 夕暮の 越の白根の 旅ごころ ひぐらしの声 河鹿鳴く声 宿の名の 入りたる手拭 いただくが 旅の習ひと なりて久しも 起きいでて まづ一浴と 人気なき 湯にひたりつつ 望む白山 と 詠み 旅情を慰めにけり。