昨日の夕方、俳優の二神光(ふたがみひかる)くんの訃報が届いた。Yahooニュースでその名前を見た時、思わず同姓同名の別人かと思ったが、それは他ならぬ彼だった。バイクの事故だったという。二神くんは二度、ISAWO BOOKSTOREの公演に参加してもらっている。2019年の「夜明け前ー吉展ちゃん誘拐事件ー」と2023年の「明日は運動会ー和歌山毒物カレー事件ー」である。
このような現実を突きつけられて何を言えばいいのか途方に暮れるが、自作に出演してもらった若い俳優の突然の死は、わたしに否が応でも回想を強いる。彼との最初の出会いは、わたしが講師を務める専門学校でだった。彼はまだ二十歳くらいだったと思う。端正な顔立ちのどちらかと言うと大人しい若者だった記憶がある。学校を卒業した後、彼は芸能事務所に入り、わたしが自作の出演者を探している時、事務所の社長さんに頼み、出演してもらうことになったのである。
「夜明け前」では、誘拐犯の兄を追及する気性の激しい弟役を、「明日は運動会」では、死刑囚となった母親の冤罪を信じる情熱的な長男役を演じてもらった。ともに「熱い男」の役なのだが、彼はどちらも素敵に演じてくれた。稽古の合間の話で印象に残っているのは、「タワーリング・インフェルノ」の話だろうか。同作に登場する消防隊長(S・マックィーン)の有能な助手について熱心に話してくれたことを思い出す。
そうそう、「明日は運動会」の稽古中、彼の行きつけのお洒落なバーへみんなで飲みに行った時、その勘定がやたらに高くて、翌日、「もっと安い店を選んでくれよ!」と泣きついたのをよく覚えている。思い返せば、あれは去年の6月だったのだなあ。あれから一年ちょっと。まさかこんな形で彼とお別れすることになるとは夢にも思わなかった。最後に会ったのは、今年の一月、わたしの作・演出による「八月のシャハラザード」を大塚の萬劇場に見に来てくれた時だった。
彼は自ら作・演出もこなし、仲間たちと作った劇団で活動もしていて、何度か観劇したことがある。劇団の人たちもさぞお嘆きのことと思う。不慮の交通事故とは言え、33歳とは余りにも若過ぎる死である。しかし、いくら嘆いても彼は戻ってこない。謹んでご冥福をお祈りする。二神くん、ありがとう。どうか安らかに。