先日、とある劇団から依頼された頂き女子を題材にした新作をやっと書き上げた。頂き女子という言葉自体、最近はほとんど耳にしなくなったが、マッチングアプリを使って独身の中年男性と出会い、言葉巧みに男性から金を詐取する若い女をそのように呼ぶ。従来の援助交際、パパ活と一線を画すのは、そこに肉体関係を介在させない点である。
このような存在を人々にハッキリと認識させたのは「頂き女子りりちゃん」を名乗る若い女で、彼女は詐欺罪で捕まり、裁判の結果、懲役8年6月、罰金800万円の実刑判決が下されている。被害総額は一億以上に上るというのだから驚きだが、彼女が作った「頂きマニュアル」はそれほど巧妙に作成され、孤独な中年男性たちを容易に騙すことを可能にしたということである。わたしも『渇愛ー頂き女子りりちゃん』(宇都宮直子著/小学館)というこの事件のノンフィクションやYoutubeの番組を通してその手口を知ったが、そのマニュアルの完全度は非常に高い。その骨子は以下のように述べられている。
①信頼関係
②頂きのための会話
③アフターケア
ここでその内容を詳述はしないが、彼女が作ったマニュアルはすべてのセールスマンに応用が利くマニュアルであると感じる。セールスマンと一口に言っても様々だが、少なくとも他人にまったく未知の商品を売る時の極意がここにはあるように思う。もちろん、この極意は詐欺行為に該当し、犯罪として処罰の対象になってしかるべきだが、それを差っ引いて考えれば、その内容には学ぶべき点が多い。特に感心するのは③で、お金をもらった後、逃げてしまうのではなく被害者と関係を継続する点にこのマニュアルのすぐれた視点がある。
ところで、浮気した人間の言い分の一つに「浮気される方にも問題がある」という反論がある。あるいは、イジメを行った人間も同じように「イジメられる方にも問題がある」という反論することがある。浮気もイジメも絶対悪であり、そんな反論はまかり通らないのが普通だが、りりちゃんの頂きマニュアルを知ると、「お金を出してしまう方にも問題がある」という感想を持たないでもない。
