先日、ロバート・タウンの訃報が届いた。おそらくアナタはまったく聞いたことがない人の名前であろう。アメリカの脚本家である。わたしは映画監督の名前は覚える方だが、脚本家の名前は余り知らない。それでもこの人の名前を知っているのは、この人の名前を折に触れて見る機会が多かったからだと思う。


この人の代表作は「チャイナ・タウン」(1974年)だと思うが、ノンクレジットという形で数々の名作の脚本に参加している。どういう映画か? こういう映画である。


●「ゴッドファーザー 」 (1972年) 

●「パララックス・ビュー 」 (1974年) 

●「オルカ」  (1977年)

●「天国から来たチャンピオン」 (1978年) 

●「世紀の取り引き」  (1983年) 

●「フランティック」  (1988年)


脚本家がノンクレジットで、すなわち自分の名前を公表しないで脚本を書くことがある。それは完成した脚本のリライトという形なのか、台詞を書き足す形なのかはまちまちだろうが、想像では監督が完成した脚本を気に入らず、正規の脚本家以外の人間にその改訂を求めるということが多いのではないか? あるいは、出演者未定のままに書かれた第一稿を実際に出演する俳優に合わせて書き直す作業も考えられる。ロバート・タウンはそういうリライトの名手だったということだろうか。


それにしてもこの人がノンクレジットで脚本に参加した映画の中に「ゴッドファーザー」と「天国から来たチャンピオン」の二本があることにある感慨を抱く。マフィアの家族を主人公にした血なまぐさいアクション映画と幽霊を主人公にしたファンタジーというジャンルこそまったく違う映画だが、それぞれわたしが最も愛する映画だからである。ロバート・タウンはこれらの映画のどんな台詞を書いたのだろう?


上記の映画の中で、わたしは唯一「世紀の取り引き」だけを見ていないが、これらは政治的なスリラー映画、海洋パニック映画、異国を舞台にしたサスペンス映画とジャンルは多岐に渡る。つまり、この人はどんなジャンルの映画も手掛けることができる職人的な腕を持つ脚本家だったということであろうか。晩年はトム・クルーズ主演の「ミッション:インポッシブル」の1と2の脚本も手掛けているから、スパイ・アクション映画も含め、ほとんどオールマイティである。


俳優や監督に比べて脚本家は余りクローズアップされることがなく、この人の訃報を受け、追悼文を書く人も余りいないのではないかと思い、同じ仕事をする人間としてこのような文を書いた。以下は氏の若い頃の写真である。謹んでご冥福をお祈りする。


✵同氏。(「X.com」より)