ちょっと前のことだが、ドナルド・サザーランドの訃報が届いた。88歳。大スターというような人ではなかったかもしれないが、わたしの世代には印象深い俳優だったと思う。わたしが印象的だったサザーランドの映画は以下のような作品。


●「M★A★S★H マッシュ」1970年

●「SF/ボディ・スナッチャー」 1978年

●「針の眼」1981年

●「アウトブレイク」1995年

●「評決のとき」1996年

●「スペース・カウボーイ」2000年


最も印象的なのは、初めてサザーランドの姿をスクリーンで見た「M★A★S★H」だろうか。サザーランドは本作において朝鮮戦争下の野戦病院で働くふざけた米軍医師をコミカルに演じていた。アクが強い顔立ちのせいか善人より悪人の役が多かったように思うが、細菌パニック映画「アウトブレイク」で主人公のダスティン・ホフマン扮する細菌学者と対立する軍部の高官役など、面目躍如たる悪役ぶりだった。歳を取ってからは人間味に溢れた老人役が多くなったように思うが、「評決のとき」の主人公弁護士の恩師役なども印象深い。この映画にチョイ役で出演していたのがご子息であるキーファー・サザーランドで、後にテレビドラマ「24」でブレークするのはご存知の通りである。


侵略SF「SF/ボディ・スナッチャー」の精神科医やナチスのスパイに扮した「針の眼」のせいだが、この人は異様な役柄もよく似合う。前者では異星生物に変態して口をパックリと開ける場面が、後者は目的の人物を殺害しようとしてナイフを掲げる場面がそれぞれに忘れがたい。つまり、この人は善人から悪人まで、粗野な人間から知的な人間まで様々な役を演じることができる多彩な演技力の持ち主だったということである


ところで、「M★A★S★H」でサザーランドと共演したエリオット・グールドはどうしているか気になり調べてみたら、こちらは85歳でご存命である。お二人の関係はわからないが、仲がよかったとするなら、さぞかし気を落としているにちがいない。当たり前のことだが、わたしの心が最も強い影響を受けた1970年代のアメリカ映画の俳優たちの訃報が次々と入る。ドナルド・サザーランドもその一人である。謹んでご冥福をお祈りする。


✵「マッシュ」のパンフレット。左側が同氏。(「オークファン」より)