昨日、成田空港から仁川(インチョン)空港へ。二年ぶりに韓国のソウルに来た。目的はソウルの小劇場で上演される拙作「八月のシャハラザード」を観劇するためである。日本人ではなく韓国人の劇団による公演である。これから数日間、ソウルの東大門(トンデムン)のホテルに宿泊して過ごす。本日は晴れ。

夜はさっそく劇場街・大学路(テハンノ)まで足を伸ばす。この街に来るとわたしはテンションが上がる。最寄り駅のヘファ駅近くの劇場で芝居を見る。「ダイビング・ボード」という芝居である。現在、大学路を中心に「ソウル演劇祭」が行なわれていて、本作はその公式プログラムの一つということである。この公演に誘ってくれたのはわたしの数少ない韓国人の友人の一人であるイムさん。わたしが日本で映画「殺人の追憶」の原作となった舞台劇「私に会いに来て」を上演した時に、韓国との橋渡しをしてくれた人である。彼自身、日本や韓国で舞台を作っている演出家である。久しぶりの再会。

観劇した劇場はキャパシティ100人余りの小劇場。できたばかりのピカピカの劇場である。原作は韓国人によるものではなくアメリカ人作家のものらしい。一人の若い女性ダイビング選手の内面を象徴的に描く芝居だった。両面客席による舞台造形が面白い芝居だったが、言葉の壁はやはり大きく理解するのが難しかった。とは言え、真剣に舞台を見ている韓国の観客たちを目の当たりにして嬉しい気持ちになった。大学路の街は平日だが、人通りは多く相変わらず活気に溢れていた。この街には小劇場が合計150もあるというのだから驚きである。ここで上演されている演劇を片っ端から見たいが、時間的な制約がありなかなかそんなことができないのが口惜しい。

終演後は、大学路にあるチキンの唐揚げを出す居酒屋でイムさんを囲んで歓談する。「私に会いに来て」の思い出話、イ・ソンギュンの逝去の話、韓国演劇事情など、様々な話で盛り上がる。大学路がよいのはたくさんの劇場に加えて、こういう美味しい料理を出す飲食店がたくさあるところである。演劇と食べ物の充実した街は、わたしにとって最高の場所である。因みに今回の渡韓の同行者は、プロデューサーのIさん、若手俳優のNくん、わたしの妻の四人である。目的の「八月のシャハラザード」は明日見る予定である。楽しみで仕方ない。


✵大学路の路上にて。