サンモールスタジオプロデュース「トワイライト1」の全公演が無事に終わる。本公演は3劇団によるオムニバス形式の公演で、ISAWO BOOKSTOREは、「冥界裁判」という法廷劇を上演した。また、わたし自身、俳優として舞台に立った。いや「俳優として」などと言うと赤面する。わたしが演じたのは、単独で行動し、三つのストーリーを紹介した上で、それぞれにコメントを加える案内人の役である。


まあ、出番は短いし、台詞も自分で思いついたことをしゃべればいいだけだから、簡単にこなせると高をくくっていたのが大間違い。毎回、台詞を噛み、話の途中で絶句し、段取りを間違え、自分の場面が終わる度に袖の暗闇で一人頭をかきむしることになった。おそらくその姿を目撃したのは、舞台監督のYさんだけだが、さぞかし可笑しかったにちがいない。自由なポジションの役だったとは言え、もっと練習しておけばよかったと悔やまれる。しかし、うまく行く時もあり、失敗があるから成功の喜ぴはあるのだなと当たり前のことを再認識したりした。


こういう経験をすると、今まで舞台上の俳優のトチリ(失敗)に関して冷たくダメ出ししていた自分を何と心がないヤツだと振り返ったりする。いくらきちんと準備をしていても、ほとんど不可避的に俳優は舞台の上でミスをする。それは演劇がリアルタイムにその場を生きる一回性の芸術だからである。だから常に失敗と隣り合わせの世界なのである。


しかし、本番に入ってからいろいろ試したこともある。本作は、開演すると、わたしの次の声が劇場内に響くところから始まる。


案内人「想像力という鍵でこの扉を開くとそこは異次元の世界。音の次元、視覚の次元、心の次元。そこは光と影、観念と実体の世界。あなたは今、そこに足を踏み入れたのです」


このナレーションに乗って黒服の案内人(わたし)が登場する。案内人は舞台後方にある印象的な幕を見上げ、ナレーションが終わると振り返り、観客に語り出す。誰にも言ってないが、実は「古畑任三郎」もイメージしているのだが、これは「トワイライト1」という作品全体の世界観を冒頭に示す必要があると考えた結果の行動である。本番に入ってから始めた行動なので、出演者は誰一人見ていない場面だが、「シンプルだが、すばらしい導入だ!」と自画自賛して、自分を慰める。


ご来場いただいたお客様、ありがとうございました。


✵「冥界裁判」の出演者たち。

✵全体写真。