TikTokを見ていたら、「日韓歌王戦」という番組の一部が流れていた。韓国のテレビ番組らしい。一部しか見ていないから確かなことは言えないが、日本人と韓国人の歌手がそれぞれ自国の歌を歌い、その歌唱力を競う番組らしい。ただし、出演している歌手は、プロではない選抜メンバーのようである。全員女性。そこで日本人歌手(歌心りえ、住田愛子ら)が披露する歌声に感動した。


わたしが聴いたのは、「時の流れに身をまかせ」(テレサ・テン)「イミテイションゴールド」(山口百恵)「ギンギラギンにさりげなく」(近藤真彦)「愛燦燦」(美空ひばり)などだが、改めて昭和歌謡のよさを感じた。もちろん、これらの歌を歌う女性たちの歌唱がすばらしいからではあるが、歌詞もいい。そう言えば、昨年だったか、「シンデレラ・ハネムーン」(岩崎宏美)の歌にのって数十人の女子がアンサンブルのよい踊りを披露するアバンギャルディというダンスグループが注目されたが、あれも昭和歌謡だった。


こういう昭和歌謡を聴くと、当時の自分は元より、それを歌っていた歌手たちの姿を鮮やかに思い出す。美空ひばりとテレサ・テンはすでにこの世にいないが、近藤真彦と山口百恵は健在である。しかし、だからと言って現在の彼らがこれらの歌を歌っても、当時のような魅力は感じないにちがいない。当たり前だが、みな年を取るからである。そういう意味では、これらの名曲は、あの時代、あの年齢の彼らが歌ったからこそ魅力的に聴こえたのだと思う。世阿弥の言う「時分(しけ)の花」である。


わたしの専門分野は音楽ではなく演劇だが、かつてわたしが書いた戯曲を現代の若者が上演してくれることは、これと同じような意味を持っているのかもしれない。そして、自作がもしもそのような形で演じ続けられるなら何と嬉しいことだろう。そして、そのように時代を越えて継承されていくものこそ真の芸術であると言える。ゆえに一介の物書きとしてはそんな作品作りを目指して精進するしかない。


ともあれ、こういう風に改めて昭和歌謡を聴くと、名曲がたくさんあることに気付かされる。現在、日本のエンタテインメント業界は韓国に負けていると思うが、昭和歌謡は世界に誇れる名曲の宝庫ではないか?


✳日韓歌王戦。(「ABEMA TIME」より)