5月に上演するSun-mallstudio produce「トワイライト1」の稽古が始まった。三団体による「不思議」をテーマにしたオムニバス公演である。そこでISAWO BOOKSTOREは「冥界裁判」と題した一編を上演する。内容は以下のようなもの。


●内容

男が目覚めるとそこは見知らぬ法廷だった。「これより裁判を始めます」という裁判官の声が聞こえ裁判が始まる。男は自ら命を絶ち、被疑者死亡につき不起訴処分になったとある殺人事件の犯人だった。

すでにこの世にいない男と殺害された女をめぐる異世界での冥界裁判が始まる。


今日は本作の作者であるわたしが、なぜこんなファンタジーを書いたかを書き記す。


ここのところ、実話を元にした芝居ばかりを作っているので、過去、現在を問わず世間を騒がせた犯罪事件に興味があるが、時折、重大な犯罪を犯した被疑者が自殺という形で終わる事件がある。最近の例である言えば、尼崎事件も、川崎市登戸通り魔事件も、北新地ビル放火殺人事件も、渋谷ホームレス殺人事件も、高槻資産女性殺害事件もみな被疑者が自殺して終わった事件である。これらの事件は、「被疑者死亡につき書類送検」という刑事手続きにより、起訴されずに真相は闇の中に葬られる。つまり、犯行動機は元より事件の真相がわからないまま終わるわけである。


そんな事実を知り、わたしは考えた。「もしも、この世で裁けなかった犯罪事件をあの世で裁く法廷があったら?」と。こうしてわたしは「被疑者死亡につき書類送検」で終わった一つの事件をあの世=冥界で裁く裁判劇を書いたわけである。内容はまったくのフィクションだが、参考にした事件はある。その事件もそのように犯人の自殺で終わった事件である。


思うにプロデューサーからこういう注文がなければ、わたしは自らこういうファンタジーを書く気にはならなかったと思う。しかし、久しぶりにこういう形式の芝居を書いてみると、これはこれで楽しい作業であることを再認識した。今年の頭に上演した「八月のシャハラザード」はまさにそういうファンタジーだったが、こういう形でしか書けない真実もあるのだから。


ところで、わたしは本作に「案内人」として出演する。プロデューサーに「お願いだよ、是非とも出演してくれよォ」と頼まれたわけではない。わたしが自ら進んで手を挙げたのである。なぜそんな出過ぎた真似をしたかと言うと、前のブログにも書いたように、わたしは「トワイライトゾーン」のロッド・サーリングを尊敬しているからである。


✳出演者たちと。