tiktokを見ていたら歌手の小椋佳さんが出てきて「俺たちの旅」を歌っている動画を見た。小椋さんの作詞・作曲による歌である。


夢の坂道は 木の葉模様の石畳

まばゆく白い 長い壁

足跡も影も 残さないで
たどりつけない 山の中へ
続いている ものなのです
夢の夕陽は コバルト色の空と海
交わってただ 遠い果て
輝いたという 記憶だけで
ほんの小さな 一番星に
追われて消える ものなのです

背中の夢に 浮かぶ小舟に

あなたが今でも 手を振るようだ


わたしの世代の人にとってこの歌は思い出深い歌ではないかと想像する。中村雅俊さんが主演した同名のテレビドラマの主題歌だからである。この歌をバックにドラマの主人公である中村雅俊ら三人の青年が都会の様々な場所でやり取りする場面が映し出される。今はなき新宿歌舞伎町の噴水で三人がずぶ濡れになる場面が強く印象に残っている。今から50年も前のことである。


改めてこの歌を聴くと、小椋さんの作詞家としての言葉の選び方の素晴らしさに驚く。もちろん、このドラマに熱中していた当時、わたしはこの歌の歌詞の意味などまったく考えもしなかったが、こうして改めてこの歌を聴くと、詩人の面目躍如たるものを感じる。だからと言って大人になった今、わたしはこの歌詞の意味がよくわかるというわけではまったくないのだが、あっという間に失われていく「青春」という季節の光と影を鮮やかに表現していると感じる。


一つ一つ書き出すとキリがないが、「背中の夢に 浮かぶ小舟に あなたが今でも 手を振るようだ」というサビの部分一つを取り出しても詩人の卓越した感受性がキラキラと輝いていると感じる。わたしはぼんやりとこんな歌を口ずさみながら幼年期を過ごしたことにちょっとした幸福を感じる。


僕は呼びかけはしない 遠く過ぎ去る者に 

僕は呼びかけはしない 傍らを行く者さえ 

見るがいい 黒い犬が えものさがしてかけていく

少女よ 泣くのはおやめ空も海も月も星も 

みんなみんな 虚ろな輝きだ


こちらは同じ小椋佳さんの「さらば青春」である。余り軽々しく使いたくはないが、こういう歌詞を作れる人を天才と言うのではないか。


*「俺たちの旅」の三人。(「ピクシブ百科事典」より)