年末年始を実家で過ごした。ある晩、自室の棚に若い頃、書いた日記帳が何冊もあるので、ちょっと恐れるような気持ちでその中の一冊を手に取った。1981年、わたしが19歳の時に書いた日記である。


●1981年1月1日

やってきました1981年。

19回目の新年だ。

久々に家で迎えた新年でもある。

万感胸につまるおもいで何を書いていいのかとまどっている。

とにかく今年は私の人生の転機になるであろうことは確かだ。

今まであまりに不勉強だった自分を戒め向学心豊かにこの年を送りたい。

さあ、はじまった!!!


文章に大きな誤りはないが、19歳のわたしは何やら新年に興奮している。「久々に家で迎えた新年」とは、おそらく高校の友人らと年越しをせずに父母と一緒に家にいたということであろう。何せ頭から「やってきました1981年」である。「万感胸につまる」は、正しくは「万感胸に迫る」が正しいように思うが、とにかく19歳のわたしの胸には様々な思いが去来しているようである。「人生の転機」とあるが、これは大学入試を前提にしているはずである。わたしはこの時、前年の大学入試に失敗し、浪人生の身の上だった。


最後の言葉は「さあ、はじまった!!!」であり、「!」が三つもついている。あれから43年の後の今のわたしには想像できないテンションの高さである。還暦を過ぎたわたしに「!」を三つもつけたくなる新年はもはやない。そんな19歳のわたしの日記帳をパラパラとめくると懐かしくもあり、恥ずかしくもある。しかし、「新春」という季節が最も似合う年齢は、この頃だったと思う。まだ何も経験していない何者でもないわたしに、元旦の太陽光は今のわたしとはまったく違う見え方をしていたにちがいない。それはまさしく「希望の光」だったと思う。


人生にも季節があるならば、その頃、わたしは春の入り口にいたのだと思う。これからやって来るキラキラした季節に胸を躍らせていたのだと思う。その抑えきれない高揚感が「!!!」の正体である。あれから長い時間が経ってわたしは輝く春を生き、まぶしい夏を生き、今、穏やかな秋を生きていると言える。厳しい冬の季節の到来はもうそう遠くない。


*太陽光線。(「yh株式会社」より)