U-NEXTで「エンテベ空港の7日間」(2018年)を再見する。エンテベ空港事件を題材にした実話ベースの映画。


1976年9月、テルアビブ空港発パリ行き旅客機がパレスチナ過激派のテロリストたちにハイジャックされる。 アフリカのウガンダにあるエンテベ空港に着陸したハイジャック犯たちは同志の釈放と多額の身代金を要求する。 混乱するイスラエル政府だが、最終的に強行突破を選択し、イスラエル軍はテロリストたちに奇襲攻撃を仕掛ける。


この事件を描いた映画はすでに「エンテベの勝利」(1976年)と「特攻 サンダーボルト作戦」(1977年)という二本があるが、本作はテロリスト側の事情もきちんと描いていて単なるテロリスト撃退映画になっていない。劇中でもそのようなやり取りがあるが、パレスチナ側から言えば、旅客機を乗っ取った武装勢力はテロリストではなく自由の戦士たちである。しかも、主人公の乗っ取り犯人四人のうち二人(男女)はアラブ人ではなくドイツ人である。(初見の時、わたしは「エンターテイメント性に乏しい地味な映画」と評しているが)


現在、戦争状態に陥ったパレスチナ情勢を念頭に本作を見ると、パレスチナ問題の一端がわずかながら理解できる。派手な場面こそ少ないが、ドキュメンタリー・タッチの展開はじわじわと胸に迫ってくる。犯人がエンテベ空港のロビーに乗客ら人質とともに立てこもった際にトイレが故障する。その修理を買って出た旅客機の副操縦士が犯人の一人に「一人の配管工は十人の革命家に勝る」と言うのも味わい深い。女のテロリストが故障した公衆電話で祖国の恋人に別れを告げる場面も切ない。こういう細部が本作の長所である。


また、イスラエル側の鎮圧部隊の兵士の恋人女性をダンサーという設定にして、クライマックスの銃撃戦を彼女が踊るモダンダンスの群舞とカットバックで描く手法も工夫がある。「この群舞の意味がよくわからん!」というレビューを見かけたが、わたしは終わることがないパレスチナ問題をダンスで表現しているように感じた。


ところで、前記の「エンテベの勝利」と「特攻サンダーボルト作戦」が製作されたのが、事件直後だという事実に驚かさせられる。そのすばやさこそまさに「サンダーボルト作戦」であるが、イスラエル側の人々はさぞかしこの人質救出作戦の成功に喜んだということか。


*同作。(「ビッグカメラ」より)