韓国の人気俳優イ・ソンギュンが亡くなったという記事を見た。1975年生まれの48歳。どうやら自死らしい。何かの機会に氏が違法薬物使用の容疑で取り調べを受けていることを知ったが、それを苦にしての「極端な選択」だったということか。


主にテレビドラマで活躍していたと言うが、わたしがこの人の存在を知ったのは「最後まで行く」(2014年)という映画を通してである。本作は人身事故を起こした刑事が謎の脅迫者に翻弄される様を描くアクション映画であるが、ソンギュンは主人公の刑事を演じていた。当時39歳のソンギュンは溌剌としていて、追い詰められる役柄とは正反対に俳優として成功が身体からにじみ出ているようだった。その後、「奴が嘲笑う」(2016年)という法廷サスペンス映画では優秀な弁護士を演じていた。そして、アカデミー賞作品賞を受賞した「パラサイト 半地下の家族」(2019年)で、主人公一家が寄生する金持ちの社長を演じ、そのキャリアはピークに達したかに見えた。


まったく人生というのはわからない。韓国映画における最も成功した俳優の一人と思われるこういう人が自ら命を絶つことになるのだから。いや、最も成功した俳優だからこそ、薬物使用の容疑がかかったことが大きな傷となり、将来を悲観したということだろうか? 48歳という年齢は、俳優として最も脂がのる年齢のはずだが、もったいないことである。


記事によれば「イさんは遊興施設の従業員の女にだまされて違法薬物を使用し、その後に脅迫されたと供述していた」とあるが、要するに商売女に嵌められて窮地に追い込まれたということだろうか。薬物使用や性的なスキャンダルで芸能界から追放される芸能人は日本にもいるが、自ら命を絶つという人は少ない。それは日本の芸能界が韓国のそれよりスキャンダルに対して寛容だからということなのかもしれないが、イ・ソンギュンのような才能ある俳優がこのような形でいなくなることは悲しい。謹んでご冥福をお祈りする。


*「最後まで行く」のイ・ソンギュン(右)。(「映画,com」より)