DVDで「ミッドナイト・キラー」(2021年)を見る。おそらくアナタはまったく知らない映画だと思うが、アメリカで実際に起こった連続売春婦殺人事件をモチーフにした劇場未公開のスリラー映画である。つまらなくないのだが、今一つ物語に入り込めないままに見終わり、本作の評価をWikipediaで確認すると、以下のような記事が。


●作品の評価

Rotten Tomatoesによれば、38件の評論のうち高評価は8%にあたる3件で、平均点は10点満点中3.4点、批評家の一致した見解では「退屈で予測可能な『ミッドナイト・キラー』は、刺激的な設定といくつかの献身的な演技を無駄にし、ほとんど汗をかくことない、スリラーを自称しているだけの作品である。」となっている。


いやはや手厳しい批評だが、Wikipediaではこういう辛辣なレビューはしばしば目にする。文中にある「Rotten Tomatoes」とは何なのかを知らなかったので調べてみた。


●Rotten Tomatoes(ロッテントマト)

アメリカ合衆国の映画評論サイト。1999年8月19日に設立された。全米の様々な作家協会・映画評論家団体が承認した執筆者による各映画のレビューが掲載され、スタッフが作品ごとに肯定・否定のそれぞれのレビューを集計。賛否の平均値は点数として掲出される。名称である“rotten tomatoes”は「腐ったトマト」の意で、「拙い演技に怒った観客が腐ったトマトなどの野菜類を舞台へ投げつける」という、映画や小説で頻出するクリシェを由来に名付けられた。(「Wikipedia」より)


まったく知らない組織(?)だったが、要するにアメリカの一番辛辣な批評家たちによるレビューが掲載されるサイトであろうことは「腐ったトマト」というふざけた団体名からも推察できる。「ミッドナイト・キラー」の批評を読む限り、作り手へのまったく忖度がないその言葉にむしろ清々(すがすが)しいものを感じるが、こういう辛辣さは日本ではなかなか見かけない種類のものではないか。そういう点をわたしは好ましく思う。ダメなものをダメと言いきるその潔さ。


「ブスをブスと言い切る潔さがなかったから大東亜戦争は始まったんだぞ」とはつかこうへい作「熱海殺人事件」の中に出てくる台詞である。つか節全開の台詞の一つだと思うが、真実をきちんと語らないと世の中は住みにくい世界であるにちがいない。わたしはロッテントマトの「ミッドナイト・キラー」の批評を読み、自分の感覚が間違っていないことを確認した。辛辣さは場合によっては誰かを傷つける悪徳だが、場合によっては世界をクリアにする美徳である。


*腐ったトマト。(「Freetik」より)