昨年のことだが、2017年に福岡県で起こった現役警察官(当時、巡査部長)による妻子殺害事件の被告人N(45)の上告審の判決が出た。最高裁は上告を棄却して死刑判決が確定した。被告人は全面否認していた事件であり、直接証拠はなく状況証拠のみの事件だったからどんな判決が出るのか注目していた裁判だった。事件からすでに6年、被告人の主張は退けられ、最終的に最高裁の裁判官たちは有罪を宣告したわけである。


●事件(2017年6月)

福岡県で現職の警察官である被告人が、親子心中に見せかけて、妻と幼い子供二人を絞殺した疑いが持たれていた事件である。被告人は逮捕・裁判を通して一貫して犯行を否認、冤罪を訴えていた。


●第一審・死刑(2019年12月)

有罪の根拠は、殺害現場である被告人の自宅へ外部からの侵入した形跡がないことを防犯カメラが証明している点、被害者である妻の指の爪に被告人の皮膚片が付着していた点である。


●控訴審・死刑(2021年9月)

高等裁判所は控訴を棄却。第一審の死刑判決を支持する。被告人の無罪を証明する新しい証拠は見つからなかったということである。しかし、被告人は無罪を訴えて最高裁に上告する。


●上告審・死刑(2023年12月)

これが今回の判決で、被告人の死刑が確定したわけである。刑事訴訟法では、死刑執行は判決が出てから6ヶ月以内にしなかければならないと規定しているが、慣例としておそらくしばらくの間は執行されないであろう。


つまり、本件は事件が起こってから最終的な判決が出るまでに6年の歳月を要したわけである。大概の場合、わたしたちは事件を知り、第一審の裁判の判決を知る辺りで事件を完結してしまう傾向があると思うが、被告人が納得しない場合、このくらいの時間はかかるわけである。


このブログを読んでくれている若いアナタのために解説するが、日本の裁判は三審制で行われている。第一審が地方裁判所で行われ、そこで出た判決に不服がある場合、被告側・検察側ともに「控訴」することができる。第二審(控訴審)は、高等裁判所で行われ、ここでの判決を受けて、被告側・検察側にまだ不服がある場合、「上告」することができる。第三審(上告審)は最高裁判所で行われ、ここで出された判決が最終的な判決になる。裁判所が出す判決はここで「確定」する。


本件は冤罪説も囁かれた事件だったが、三ヶ所の裁判官たちがそれぞれ死刑判決を出していることから判断すると、被告人の犯行は明らかであるということであろう。


*最高裁。(「建築パース.com」より)