観劇と恋は似ている。そんなことを考えたのは、以前、熱心にわたしが作る芝居を見に来てくれた人がパタリと劇場へ来てくれなくなったことに起因する。常に集客にカリカリしているこちらとしては「嫌われたのかな」と想像するが、観客には観客の事情や心情があり、度々、芝居見物に足を運ぶことも容易ではないのかもしれない。忙しいのかもしれないし、何より現在、観劇料金は高いことが原因かもしれない。


わたしは何かしらの偶像に熱を上げることが少ない方である。それでも幼い頃、いわゆるアイドルと呼ばれる人に熱中したことはないでもない。そういう時は、おそらくその人に擬似的な恋愛感情を抱いていたにちがいない。だから、好きなその人のことがやることをいちいちチェックして、追いかけていたと思う。今現在、美少女アイドルや美少年アイドル、韓国のポップアイドルなどに熱中する人も同じように彼らに擬似的な恋愛感情を抱いているにちがいない。


しかし、長いことその人に恋し続けることは、現実の恋愛同様、相当に難しいものである。ゆえに一生、その人を追いかけ続けることは珍しく、大体はいつしかその人への恋心が薄れ、離れていくものだと思う。かつてわたしの芝居を熱心に見に来てくれた人も、それと同じようにいつしか熱が冷め、劇場へ足を運ぶ気にならなくなるのだと思う。芝居もアイドル同様に人気商売である。


それはそれで仕方ないことだとは思うが、かつて恋された側であるわたしとしてはちょっと悲しい気持ちになる。そして、その人の観劇熱を維持できなかった自分のふがいなさを感じたりする。その気持ちは、常連さんの足か遠退いたバーのママのようなものかもしれない。


しかし、それでもわたしは新規の常連さんを獲得し、バーの経営を続けたいと思う。なぜなら、そのバーは単に酒を提供するための場所だけではなく、わたしにとっての心のユートピアのような場所であるから。わたしが経営するバーは本日も開店している。小劇場B1での公演は本日が千秋楽。マチネ、ソワレともに当日券あり。


*「あなたはわたしに死を与えた」の一場面。(撮影/原敬介)