最近、ネットのニュースなどで「立ちんぼ」という言葉をしばしば目にする。これは、新宿歌舞伎町にある大久保公園付近で、売春目的で客を探す若い女たちを指して使われているようである。売春は世界最古の職業らしく、いつの世にも存在する仕事の一つだと思うが、「立ちんぼ」とはずいぶん古い言葉である。


●立ちんぼ

「立ちんぼ」とは、ホテヘルやデリヘルなどの風俗店を介さずに路上に立って近づいてくる男性と売春の交渉を直接行う女性のことを意味する表現。 (「実用日本語辞典」より)


この言葉がいつ頃から使われているのかよくわからないが、昭和時代の街娼を指す言葉ではなかったか? それが令和時代、コロナ禍の後、生活に困窮した若い女性たちが、そのような仕事をせざるを得ない状況を招いていると考えてよいのだろうか? まあ、立ちんぼ女性の中には、楽しんで売春している人もいるかもしれないが、多くは生きるためにやっていると思う。戦争後の混乱期、アメリカ人相手の街娼のことを「パンパン」と呼んだらしいが、「立ちんぼ」という言い方にはそのくらいの古さを感じる。それが令和時代の今、再び登場したというわけである。


「石油の値段のためにたくさんイラク人を殺しておいてふざけるな! お前らのせいでロシアがどうなったかわかるか? ギャングと売春婦ばかりだ!」


正確ではないが、ハリソン・フォードが大統領を演じる「エアフォース・ワン」(1998年)の中で、大統領専用機を乗っ取ったテロリストのリーダー(ゲイリー・オールドマン)が言い放つ台詞である。テロリストのリーダーはロシアの国粋主義者という設定で、アメリカ国家への憤りをこの台詞で表現しているわけだ。つまり、国が荒廃すると、若者がみなそのような人間になってしまうということである。


立ちんぼの話を知るとこの台詞が脳裏をよぎるのは、そのような文脈においてである。立ちんぼの増加は、雇用の在り方と貧しい人たちの救済の仕組み、すなわち、国の政策に関わることだからである。こんなことを言うと、歌舞伎町の立ちんぼの女性たちから「お気楽なことを言うな!」と叱られそうだが、若い女性たちがそんなことをしなければ生きていけない世の中がよい世界だとはわたしには思えない。そんな現実を招いた責任はわたしを含めた大人の男性にある時に思う。


*大久保公園。(「新宿区公園探訪」より)