昨日に引き続き、映画「夜明け前―吉展ちゃん誘拐事件―」の続報である。今回はインタビュー編である。本作の映像化に関係した俳優や監督へのインタビューがいくつか紹介されている。


ところで、先日、新宿の雑遊で上演した「その先の闇と光」は、三つの実際に起こった殺人事件を題材にした芝居である。名古屋保険金殺人事件、和歌山毒物カレー事件、世田谷一家殺害事件である。芝居を見ていただいたお客様からしばしば尋ねられるのは、芝居を上演するに当たり「ご遺族の方に連絡したんですか?」という質問である。これはわたしをドキッとさせる質問で、返答に窮する場合がある。


和歌山毒物カレー事件の芝居に関しては、劇中、カレー事件長男氏の著作が大きな役割を果たすことから、初演の時にツイッターを通してご本人にわたしから直接、ご連絡した。配信を通して観劇してくれる予定だったが、ちょうどその頃、ご長女が亡くなるという事態に見舞われ、結局、観劇してもらうことはかなわなかった。名古屋の事件と世田谷の事件のご遺族には、連絡方法がなく、公演情報を知らせることはできなかった。


本作も実際に起こった事件を元にした芝居が原作なので、プロデューサーでもある田島亮さんは神経を尖らせているように感じる。しかし、「実録もの」の作品を公開する時には、そういう慎重な態度で臨むのは当然であると思う。YouTubeの視聴者は、場合によっては何万、何十万という数になる可能性があるのだから。そして、連絡方法がわからない場合もあるとは言え、被害者側であるにせよ、加害者側であるにせよ、事件の関係者はこの世に存在するからである。


わたしは、劇作家として、事件の被害者や加害者の関係者が観劇されても、決して不快な気持ちにならないように劇を構成しているつもりだが、物語が事件の本質に迫れば迫るほど関係者を不快な気持ちにさせる場合があるのが「実録もの」の難しいところである。


映画「夜明け前―吉展ちゃん誘拐事件―」は三回に分けて配信される。


①三本指~弟の満は兄を疑う。(6月22日公開)

②別件逮捕~兄弟たちは葛藤する。(6月29日公開)

③自供~中原保はついに自白する。(7月6日公開)


まず公開されるのが①である。1963年、テレビとラジオで公開された誘拐犯人の声が自分の兄であることに気づいた弟・満が動き出すのがオープニングである。ご視聴くださることを。


*田島亮さん。


●インタビュー映像

https://www.youtube.com/watch?v=CNQMcDLF748