DVDで「FALL/フォール」(2023年)を見る。ネットの動画で予告編を見た時から興味を持っていた場所限定型のパニック・アクション映画。


ロッククライミング中の事故で恋人を失ったベッキーは、YouTube動画を作っている親友のハンターとともに荒野の真ん中にそびえ立つ地上600メートルもある鉄製のテレビ塔の登攀(とうはん)に挑戦する。しかし、塔の頂上にたどり着いたのもつかの間、梯子が崩落して二人は塔の頂上に取り残されてしまう。人気のまったくない荒野の真ん中で二人は決死の脱出を試みる。


わたしはこういう場所限定型のパニック映画に強い関心があり、ゆえに一見に及んだわけだが、舞台が「荒野の真ん中にそびえ立つ地上600メートルのテレビ塔」であるところにオリジナリティがある。もちろんすでに「キャスト・アウェイ」や「ロスト・バケーション」や「オープン・ウォーター」や「127時間」や「ALONE アローン」など、限定空間で主人公が孤軍奮闘する映画は数多くあるが、こういう特異な設定は初めてである。


本作は実際に高い鉄塔の上で撮影したと仄聞するが、高所恐怖症の人は直視できないような場面が連続する。わたしは必ずしも高所恐怖症ではないが、それでも恐怖に満ちた画面を見ながら尻がムズムズした。こんな恐ろしい場所で演技をすることになり、それをこなした二人の若い女優の勇気に心から拍手を送りたい。


基本舞台の場所にオリジナリティがあるとは言え、本作はこの手のパニック映画のパターン通りの展開をする。助けを求めるためにスマホを靴に入れて塔の上から落下させたり、宿泊所にドローンを使ってメモ書きを飛ばしたりするところが今様で、それらの救援手段がことごとく失敗していく様も工夫されている。


スマホ、ドローン時代の脱出サスペンス映画はだんだんと作りにくくなっていると思う。通信手段の発達は、主人公を絶体絶命の隔絶された状況に追い込む時の障害になるからである。そういう意味では、こういう舞台を設定し、新しい場所限定型のパニック映画を作ろうとした製作陣の意欲は大いに買う。


*同作。(「Yahoo!映画」より)