絵画全般に関して詳しくないので、わたしは後世に名を残した著名な画家についての知識はほとんどないに等しい。好きな画家はいるが、その人の展覧会に足を運んだり、積極的に画集を買ったりすることはほとんどない。そんなわたしではあるのだが、最近、ゴッホとピカソは対照的な人生を送った人らしいことを知った。


オランダ出身のゴッホは今でこそ有名な画家であるが、生前に売れた絵は一枚しかなかったという。ゆえに生活も苦しく、弟のテオによる経済的支援がなければ暮らせないような有り様だった。つまり、ゴッホは非常に貧乏で、貧しい生活を強いられ、最後は自殺という形で人生を終えた不遇の芸術家だった。ゴッホが評価されたのは、彼が生きている時ではなく、死後のことである。 


 対して、スペイン出身のピカソは、生前から高い評価を得て、非常に裕福な暮らしをしてたという。その画才は言うまでもないが、ピカソは自分の絵を売り込んだり、金儲けに関しても天才的だった。自作を話題にするためにサクラまがいのことをしたり、展覧会を開催し、画商を集めて自作をプレゼンすることを積極的に行った。その結果、ピカソの絵はたくさん売れて、莫大な資産を持つに至った。


つまり、ゴッホには芸術的な才能はあったが、まったく商才がなかったの対して、ピカソはその両方を持っていたということだろう。と、そんなことを知ったのは、とある酒席であるプロデューサーが、わたしのことをゴッホに例えたことをきっかけとする。世界的に有名な画家とわたしごときを比べるのはおこがましいが、まあ、その生き方だけで捉えれば、共通点はあるかもしれない。少なくともわたしに商才があるとはまったく思えないから。そして、わたしの周りを見回しても、商才がある人は生き残り、そうでない人は消えていく現実を垣間見る。


それ以来、わたしはゴッホの生涯に興味を抱き、少しずつゴッホに関する本を読んだりしている。ゴッホは不幸だったか? 主観的には不幸だったかもしれない。何せ彼は37歳という年齢で自殺を遂げてこの世を去っているのだから。しかし、ゴッホは、今でも自分の名前が世界に残っていることを知らない。


*ゴッホ自画像。(「CASIE MAG」より)