Netflixで「消えない罪」(2021年)を見る。まったく予備知識はなかったが、罪を犯した人間の出所後の物語だと知り、関心を持ち一見に及ぶ。


保安官殺害の罪で服役中のルースが20年の刑期を経て仮釈放される。いくつかの仕事をかけもちしながら彼女は社会復帰を目指すが、前科がある人間に対して世間の風は冷たい。そんな彼女の唯一の望みは、服役によって別れを余儀なくされた妹との再会だった。ルースは、偶然に知り合った弁護士のジョンの力を借りて、妹の育ての親と面会することになる。


わたしが知る限り、罪を犯し、出所した人間を描くドラマは「BOY A」や「幸福の黄色いハンカチ」や「ショーシャンクの空に」や「すばらしき世界」などすぐれた作品が数多くあるが、本作もそういう系譜の上にあるドラマである。しかし、仮釈放されたヒロインが冷たい世間の風に翻弄されるという内容に加えて、かつて彼女が離別した幼い妹に再会したいという目的を持っている点が本作のオリジナリティであり、その妹の存在が大きな役割を果たしている。言うなれば「幸福の黄色いハンカチ」における勇作(高倉健)の妻(倍賞千恵子)に当たる人物。


主人公による妹探しの過程を縦軸に、妹と彼女を里子として引き受けた家族の物語を横軸にして、ドラマを立体的に膨らませ、さらに親切な弁護士一家との交流や女に殺害された保安官の息子に当たる兄弟の復讐がからみ、物語は多彩な可能性を想像させながら進行する。そして、クライマックス直前にわたしたちは予想もしなかった意外な真実を知らされる。


ヒロインのルースを演じているのはサンドラ・ブロックである。「スピード」(1994年)でその溌剌たる魅力を振りまき、「デンジャラス・ビューティー」(2001年)でキュートなコメディアンヌぶりを発揮した彼女もすでに五十代後半。ここでは過酷な過去を持つ陰鬱なムードを醸し出す中年女性をリアルに演じていて目を見張る。真相は明かさないが、本作が最後に我々を感動に導くのは、本作がヒロインの犠牲の物語だからに他ならない。その犠牲は、ちょっと東野圭吾の「容疑者Xの献身」を彷彿とさせる。若い女性監督の絵作りも力強い。


*同作。(「映画.com」より)