恐ろしい少女を主人公にしたホラー映画「エスター」(2009年)の前日譚が、「エスター ファースト・キル」という邦題で来年の3月に公開されることを知った。ヒットした映画の続編が作られるのは昔から枚挙に暇がないが、「待望の続編」と呼びたい作品は余りない。続編は大概の場合、正編に劣るのが通例だからである。しかし、本作はわたしにとって待望の続編である。「エスター」はよくできたホラー映画だったからである。


この続編は、第一作の後日譚ではなく前日譚であるという。確かにエスターは第一作の最後に凍った湖に沈んで死んでしまったから後日譚は作りようはないのだが、第一作の劇中において、エスターはこの家に来る前に別の一家に養子として引き取られたことが明かされていて、続編はその最初の家族とエスターの戦いを描くのだと思う。「エスター」のヒットに気をよくしたプロデューサーがそこに目をつけたのはよくわかる。


しかし、問題は第一作より前の時代のエスターを誰が演じるかである。もちろん、エスターを演じたイザベル・ファーマンが続投するのが順当な配役だが、第一作からすでに13年、彼女は25歳の成人女性である。当然、彼女を配役から外し、新しい子役を配役せざるを得ない。しかし、続編はファーマンが続投するのである。


続編のエスターの年齢設定は10歳である。すでに成人したファーマンはいかにして10歳の少女を演じるのか? 周りの人々が厚底靴を履いて彼女を小さく見せたり、実際より大きな家具を配置してエスターの小ささを表現したりする工夫をして撮影している様子をネットで見かけたことがあるが、本当だろうか? こう言うと本末転倒だが、映画の内容よりもむしろそういう新しい興味が続編にはある。いや、わたしたちはすでにエスターの正体を知った上で続編を見るわけだから、次第にエスターの正体がわかっていく第一作のミステリとしての魅力はすでにないに等しい。となれば、わたしの興味の対象は、イザベル・ファーマンの化けっぷりに向かうの無理はない。頑張れ、ファーマン!


*イザベル・ファーマン。(「映画.com」より)

*厚底の人々。