ネット上で以下のような記事を読んだ。ちょっとびっくりである。


《刑罰は、基本的には、犯罪者が引き起こした損害と同程度の損害を当人に味あわせるというものだが、近年その在り方が問われている。 特に凶悪犯罪者に行われる「死刑」は、世界的に廃止される国も増えてきており、その効果も明確ではないことから、代替案が模索されている。 イギリスの哲学者は、死刑の代替案のひとつとして、犯罪者を昏睡状態に陥らせ、自由に活動できない「失われた年月」を測定可能な刑罰(償い)の単位として"刑期"と同等とみなす方法を考え、論文を発表した》(「カラパイア」より)


死刑に代わる刑罰として「昏睡刑」なる刑罰が検討されているというのである。簡単に言えば受刑者を眠らせて刑罰に代えるというのである。わたしはまったく想像できない発想による刑罰だったので驚いた。従来、死刑に代わる刑罰として設定されてきたのは、仮釈放なしの終身刑(日本は無期懲役)であるが、それは受刑者の自由を終生に渡り奪うという刑罰である。死刑=受刑者の命を奪うことに次ぐ刑罰としては、誰もがこのような刑罰の形式しか発想できなかったと言える。わたしもその一人である。


昏睡刑が実際に採用されれば、そんな刑罰の歴史に大変革が起こることになるが、本当にこれは刑罰たりうるのだろうか? 安眠という言葉があるように眠りには人間にとって快適な側面がある。刑罰とは本来的に受刑者にとってある種の苦痛を伴うものでないと刑罰たり得ないと考えると、昏睡刑は刑罰たり得ないのではないか? また、彼らは眠らされて悪夢を見て苦しむかもしれないが、逆に素敵な夢を見ることもあり得るのである。


いや、本人の意思とは関係なく、薬物により強制的に眠らせるという行為は、確かに受刑者の自由を奪う行為に等しいとも思う。だから、イギリスの哲学者の提案は一理も二理もあるとも思う。しかし、犯人に殺害された被害者の遺族は、そんな「甘っちょろい」刑罰で納得できるのだろうか? こちらが現世において様々な苦労を強いられている時に、受刑者は刑務所で安らかに眠りこけている現実に遺族たちは耐えられるのだろうか? いずれにせよ、昏睡刑とは、画期的だが物議を醸す提案である。


*昏睡状態。(「pima-san」より)