U-NEXTで「ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男」全10話を見る。何日か前にも触れたが、1972年に公開された「ゴッドファーザー」の製作過程と舞台裏を描くテレビドラマである。今年は「ゴッドファーザー」公開50周年である。


異業種から転身した映画プロデューサーのアルバート・S・ラディは、パラマウント映画会社において「ゴッドファーザー」を映画化することを命じられる。脚本も完成し、ラディは映画製作を進めるが、映画化に反対するマフィアの妨害、会社幹部との意見の相違、キャスティングの難航など様々な問題が襲いかかる。果たして、ラディは無事に映画を完成することができるのか?


プロデューサーのラディを主人公にして、彼の仕事を献身的に助ける女性秘書、奔放な性格の上司、人が好い原作者、髭面の映画監督などを絡めて、ドラマは「ゴッドファーザー」を取り巻く様々な出来事を描いていく。当初は、撮影秘話に重点がかかるのかと思っていたら、そうではなく、ドラマで描かれるトラブルは多様である。そういう意味では、単なる映画撮影の苦労話ではない。


本作を見ながら真っ先に連想したのは、アルフレッド・ヒッチコック監督が作ったホラー映画「サイコ」(1960年)の舞台裏を描く「ヒッチコック」(2012年)である。しかし、あちらが映画を作る監督の苦悩に重点がかかっているのに対して、こちらは視点がプロデューサー寄りであり、尺が長い分、描かれる世界がより多彩である。それでも、「ゴッドファーザー」を知っている人間には、撮影の再現場面が楽しく、実際の本編映像は一切、画面に出てこないという作り方も好ましい。


「芝居で劇中劇を扱う時は、劇中劇の内容と登場人物たちが直面する現実がきちんと重ならなければならない」


シェイクスピアの言葉ではない。わたしの言葉である。その文脈で言うと、「ゴッドファーザー」というマフィアの家族の劇中劇が、本作の主人公の映画プロデューサーの現実に重ならないと作劇上はいけないと考えるのだが、主人公のラディが独身男のせいか、そのような二重構造を持つには至っていない。ところで、1930年生まれのアルバート・S・ラディはご健在で、今も同い年のクリント・イーストウッドと一緒に映画を作っている。すばらしいことである。


*同作。(「ムービードラマ・クラブ」より)