時々、スポーツクラブの洗面所付近で、スポーツウェアに着替えた男性が、何やらスポーツドリンクを作っている姿を目撃することがある。わたしの立場から言わせてもらうと「スペシャル・ドリンク」とでも呼びたいその謎のドリンクは、大抵の場合、白や緑色をしている。場合によっては、ドリンクAドリンクとBを混ぜ合わせしゃかしゃかとシェイクしている人もいる。そんな飲み物をチラリと垣間見ると、いつもわたしは心の中でつぶやく。


――「あの飲み物だけは、死んでも飲みたくないよなあ」


もちろん、作った本人にとってはその飲み物は、からだによい素晴らしい栄養ドリンクであるのかもしれない。しかし、傍目から見ると、その飲み物はどう考えても「怪しい飲み物」以外の何ものでもない。だから、「君も飲んでみなよ」と言われても、絶対に口にしないと思う。そして、もしもわたしがその「スペシャル・ドリンク」を飲むとしたら、それはその人のことを相当に信頼しているということだと思う。


わたし自身は、そういう「スペシャル・ドリンク」を作り、愛飲する習慣はまったくない。一時期、スポーツクラブで運動して汗をかいた後にポカリスエットを飲んでいた時期があったが、ポカリスエットは「スペシャル・ドリンク」と呼ぶほど特別な飲み物ではない。わたしがここで言うそれは、何種類かのサプリメントを組み合わせて、それを水に溶かしたような飲み物を指している。そのような飲み物を見ると、ましてやその飲み物に色がついていたりすると、なぜか背中がぞっとしてしまうのである。


まあ、そんなことを言いながらも、わたしは日常的にコカ・コーラを愛飲しているのだから、偉そうなことは言えない。コカ・コーラを飲んでいるわたしをとやかく言う人はいないはずだが、もしも宇宙人がそれを見たら、さぞかしびっくりするにちがいないと思う。見ようによれば、あの黒い液体は、とんでもなく怪しい飲み物に見えると思うからである。


*スペシャル・ドリンク。(「鹿ログ」より)