偶然だが、YouTubeでマカロニ刑事の殉職場面を見る機会があった。(YouTubeの利点はこういう過去の作品の名場面を簡単に視聴できる点である)いきなりこのように書いても若い人には何のことかわからないだろうから説明するが、マカロニ刑事とはテレビドラマ「太陽にほえろ!」において、萩原健一さんが演じた刑事のあだ名で、マカロニのように白くてヒョロヒョロしているからそう呼ばれたわけではなく、三つ揃いの装いを周りから「マカロニ・ウェスタン風」と評されたことに由来する。


すでに「太陽にほえろ!」を知らない世代の方が世の中の大勢を占めるかもしれないが、わたしはこのドラマの熱心な視聴者だったから、マカロニ刑事が殉職した時は大きなショックを受けた。調べてみたら、マカロニこと早見淳刑事が暴漢に襲われて死亡したのは、1973年7月である。(わたしは小学6年生)その夜、マカロニ刑事は事件が一通りの解決をみた後、空き地の片隅で立ち小便をする。用が終わって振り向くといきなり暴漢がマカロニの腹にナイフを突き立てる。物語とはまったく関係ない物盗りによる通り魔的な犯行だった。


おそらく小学6年生のわたしが強いショックを受けたのは、「物語とは関係ない無意味な死」を目の当たりにしたことだったように記憶するが、改めてマカロニ刑事の殉職場面を見ると、その場面の暴力性にちょっとびっくりする。暴漢は数度、マカロニの腹にナイフを突き立てるが、暴漢をがっちりと掴んで離さないマカロニは、腹に血を滲ませながら暴漢が着ている白いシャツをビリビリと破る。小学6年生の視線でこの場面を見直すと、ずいぶんと生々しい暴力描写だと思う。


襲いかかってきた暴漢の「シャツをビリビリと破る」という演技は、監督の指定だったか、あるいは、俳優・萩原健一の提案だったか? わたしは何となく後者ではなかったかと想像する。いずれにせよ、暴力描写における様々な自主規制が行われるであろう令和時代のテレビドラマに比べて、昭和時代のそれはよくも悪くも自由だったということか。


*マカロニ殉職場面。(「SUZUのひとり言」より)