DVDで「TUBE チューブ 死の脱出」(2022年)を見る。フランス製のSFスリラー映画。わたしはこういうタイプのSFを知るとムラムラと見たくなる性質がある。


暗く狭いチューブの中で目覚めた女。自分はなぜこんなところにいるのか? 女は訳がわからぬままチューブからの脱出を試みるが、様々なトラップが彼女を襲う。果たして、彼女はトラップをかわしてここから脱出できるのか?


本作の内容を知れば、誰もが「CUBE」(1997年)を連想するにちがいない。最近、日本でもリメイクされたカナダ製のSF映画である。訳がわからない限定空間に閉じ込められた人間が、そこから何とか脱出しようとする様を描くという意味では、両作は同じような内容を持っている。しかし、「CUBE」には複数の人間が登場したが、こちらは基本的には脱出を試みるのは主人公の女性一人である。そういう意味ではシンプル極まりない構造の一編であるわけだが、シンプルさが単調さに見えてしまう点が辛いところだ。結末も納得できない。


チューブ(と言うより頑丈な通風口)を這いずり回る女がヒャーヒャー言っているだけの単調な展開に付き合いながら、スティーブン・スピルバーグ監督の「激突!」(1971年)は、なんであんなに面白いんだろうと考えた。本作と「激突!」はまったく違う内容だが、誰にもわかるシンプルな構造を持つ点や登場人物が基本的に一人である点が共通している。


すぐれた限定空間は、限定空間を超えて別の何かを語り出す場合がある。「激突!」を例にすれば、ハイウェイは男の人生、男に迫り来るトラックは男の人生を妨害する悪魔にも見える。本作も作りようによれば、延々と続くチューブの連続が、女のややこしい人生の象徴に見えたりもするはずだが、物語は一向にそのような広がりを持たず、わたしの想像力を刺激しない。アイデアが斬新でも、90分を面白く見せるのはなかなかな難しいものである。


*同作。(「映画.com」より)