「男は敷居を跨げば七人の敵あり」という言葉がある。「男は家から外へ出るとたくさん敵がいる」という意味の言葉である。なぜこんな言葉(ことわざ)が生まれたのか不思議でもあるが、まあ、世の中には自分に好意を持って接してくれる人ばかりではないことは事実であろう。いや、好意を持って接してくれる人の方が例外であり、敵がい心と言うほどあからさまではないにせよ、人は他人に対してそんなに関心があるわけではない。


そして、他人と他人が付き合う時、そこには互いの利害があり、その利害が折り合わない場合、人々は激しく対立する可能性がある。そんな現実を踏まえた結果、「男は敷居を跨げば七人の敵あり」というようなことわざが生まれたにちがいない。敷居の内側には男の「家族」がいて、その人たちは男の味方であるという含みを感じる。


わたしも現実に生きている人間なので、好むと好まざるを得ず敵はいるように思うが、それらの敵は必ずしもウルトラマンにおける怪獣のようにわかりやすい形では存在しない。わたしのプライドを傷つけたり、行く手を阻む者は、はっきりした形で目の前に現れない。いや、場合によっては明快な形で敵が現れる場合もなくはないが、大概の場合、それは目に見えないものである。そういう意味では、やくざの世界などは一般人の世界などより、よほど明快に敵が存在する世界であるのかもしれない。そこでは、一つの利益をめぐって非常にわかりやすく敵対するグループが存在するように思うからである。


翻って、なぜ「男は敷居を跨げば七人の敵あり」の主語が男であって女ではないか? これは、この言葉を生んだ時代の社会が女性の社会進出に厳しく、男性優位の社会であったからだろう。女にも男同様に敵はいると思う。


*怪獣と戦うウルトラマン。(「BANDAI CHANNEL」より)