何度も取り上げて恐縮だが、また「ゴッドファーザー」(1972年)の話題である。先日、この映画を見直した。そして、再びすばらしい映画的な感興に浸った後、この映画が作られた時、その製作に携わった人々の年齢を調べてみた。(公開時の計算だから、撮影時は一歳ずつ若い)


●ヴィト(父親)マーロン・ブランド/48歳

●ソニー(長男)ジェームズ・カーン/32歳

●フレド(次男)ジョン・カザール/37歳

●マイケル(三男)アル・パチーノ/32歳

●コニー(長女)タリア・シャイア/26歳

●トム(顧問弁護士)ロバート・デュバル/41歳

●ケイ(マイケルの恋人)ダイアン・キートン/26歳


まず、驚くのはマーロン・ブランドが当時まだ初老にはほど遠い48歳だったという事実である。コッポラ監督による音声解説によれば、ヴィト役には他にローレンス・オリヴィエが候補となっていたらしいが、オリヴィエは当時65歳で、年齢的には適役である。しかし、ブランドが演じるヴィトはきちんと老齢のマフィアのボスに見える。これはほとんど演技におけるマジックのようである。


また、もう一つの驚くべき事実は、この堂々たる映画を撮った時のフランシス・フォード・コッポラ監督の年齢である。コッポラは33歳だったのである。33歳! その倍くらいの年齢になったわたしから言わせれば、まぎれもなく若僧である。にわかには信じられないような事実。コッポラ監督の音声解説によれば、降板の危機に何度か見舞われながらも撮影を続けたという。にもかかわらずこの完成度の高さはどうだ。


本作の原作はマリオ・プーゾォの小説だが、脚本はプーゾォとコッポラが書いている。そして、本作を大成功に導いた最大の要因は、わたしは33歳のコッポラが脚色したこの脚本にあるように思う。様々なエピソードが描かれる原作小説を、マフィア一家の家族の物語に絞り、暴力を背景しながらも、一つのホームドラマとして描いた点である。そして、最大の功績は、原作では時系列的に描かれる長女コニーが産んだ赤ん坊の「洗礼の儀式」とマイケルの指示による五大ファミリーの「ボスの暗殺」を、同時並行にしてカットバックで描いた点である。本作のクライマックスに当たるこの場面は、わたしが知る限り「映画史上、空前絶後」と評したい秀逸な場面である。世界の美しさと残酷さ、聖と俗をこれほど芸術的に描いた場面をわたしは他に知らない。


*若き日のコッポラ。(「Cine fil」より)