2020年も今日で終わりである。人間の一年の振り返り方はいろいろあるが、わたしの人生の主筋は演劇活動であるから、例年通りそれを軸に一年を振り返る。

●3月
専門学校で「八月のシャハラザード」を上演する。わたしが講師を務めるワタナベエンターテイメントカレッジの卒業公演である。公演場所は中目黒の校舎内。

※公演会場にて。

●5月
昨年末に上演した「夜明け前―吉展ちゃん誘拐事件―」(論創社)を出版する。併録は「好男子の行方」である。すなわち、“昭和事件シリーズ”の第一作、第二作が収録されている。これでわたしの戯曲集は17冊になった。

※新しい戯曲集。

●8月
「壁の向こうの友人―名古屋保険金殺人事件―」を上演。公演場所はサンモールスタジオ。サンモールスタジオのプロデュースによる「Crime2ed 贖罪編」と題された三劇団によるオムニバス公演の一本として。拘置所の面会室を舞台にした死刑囚と被害者遺族の人間ドラマ。

※出演者たちと。

●12月
「獄窓の雪―帝銀事件―」を上演する。公演場所はサンモールスタジオ。世に名高い「帝銀事件」を難を逃れた銀行員たちの視点で描いた。本作はISAWO BOOKSTOREの第5回公演である。

※出演者たちと。

本年は、新型コロナウイルスに翻弄された災難の年として長く記憶されるだろう。夏に予定されていた東京オリンピックが延期になったのはもとより、演劇の世界もコロナ禍により大きな打撃を受けた。公演中止、公演延期が相次ぎ、自粛という名の元に劇場へ足を運ぶ観客が激減し、マスク姿が人々の常態となり、心中穏やかざる日々が続いた。その状態は今も続いている。

平沢「人間、失くさないと何が本当に大切なのかわからないもんですな」

これは先日幕を下ろした「獄窓の雪」の中で平沢貞通が口にする台詞だが、このような状況になって初めて普通に観客を劇場へ迎えることができることがいかに大切だったかがよくわかる。来年はコロナ禍が終息し、また当たり前の日々が戻ってくることを切望せずにはいられない。今年一年、ブログを読んでくれてありがとうございました。よいお年を!