俳優のミッシェル・ロンスデールの訃報が届いた。(記事の表記はマイケル・ロンスデール)お歳だからやむを得ないとは思うが、この人はわたしの心に大きな痕跡を残した人なので思い出を書く。ネットの記事では「『007ムーンレイカー』の悪役として知られる」と紹介されているが、この人の代表作は断じて「ムーンレイカー」の悪役ではない。「ジャッカルの日」(1973年)のルベル警視である。

現実に捜査能力に長けた名刑事が存在するようにスクリーンの中にも名刑事は存在する。有名なのは「ブリット」のフランク・ブリット刑事、「フレンチ・コネクション」のジミー・ドイル刑事、「ダーティハリー」のハリー・キャラハン刑事だが、捜査能力という点において最も優秀な刑事は「天国と地獄」の戸倉警部であり、「ジャッカルの日」のクロード・ルベル警視(副総監の地位にある)であるとわたしは思う。本作においてロンスデールは、謎の暗殺犯の検挙を一任されたパリの敏腕捜査官を演じる。その捜査と追跡に関する能力は、素人であるわたしの目から見ても感心する手際のよさである。逆に言うと、ルベルが敏腕だからこそ「ジャッカルの日」はあそこまで盛り上がったのである。鳩好きで飄々とした雰囲気はちょっと刑事コロンボも思わせる。

もちろん、ミッシェル・ロンスデールのキャリアは多岐に渡り、「薔薇の名前」や「RONIN」や「ミュンヘン」などでも独特の印象を残したことは間違いないが、やはり代表作は「ジャッカルの日」だと思う。わたしは今でも何度も「ジャッカルの日」を見直すので、わたしにとってルベル警視は親戚のオジサンくらい親しい人である。自ら射殺したジャッカルが無名墓地に葬られるのに立ち会い、無言でその場を立ち去るルベル警部のカッコいいこと!   謹んでご冥福をお祈りする。

※「ジャッカルの日」のルベル警部。(出典不明)