ハリー・キャラハン刑事は、サンフランシスコ警察殺人課の刑事である。わたしが「ダーティハリー」(1971年)を見て熱狂していた頃、警察には「殺人課」という部署があることを信じて疑わなかった。だから、日本の警察にも当然、「殺人課」という部署があると思い込んでいた。しかし、後にわたしは日本の警察に「殺人課」は存在しないことを知る。日本の警察において、殺人事件を扱うのは「捜査一課」である。

それはそれで部外者のわたしがとやかく言うことではないが、警察に「殺人課」がある国とそうでない国は、やはり大きな違いがあるように思う。単純に考えれば、殺人事件がたくさん起こるから「殺人課」は必然的に必要なのであり、殺人事件は滅多に起こらないから「殺人課」は必要ないのである。つまり、アメリカは殺人事件が多い国であり、日本はそうでない国であると言える。どちらが住みよい国かは言うまでもないが、逆説的には「殺人課」が存在する国はエキサイティングな国である。それは、例えば、刑務所においては殺人犯が一番ステータスが高いという事情に通じる。刑務所においては、犯した罪が大きければ大きいほど格が上がるのだから。

警官「申し遅れました。コロンボと言います、ロス市警殺人課の」

警官「申し遅れました。高橋と言います、練馬警察生活安全課の」

両者の迫力の違いは言うまでもないだろう。警官としては前者の方がカッコよく見えるのである。殺人課の刑事の来訪と、生活安全課の刑事の来訪は、そのただならぬ空気感において、前者は後者を圧倒する。殺人課は英語で「homicide」と言う。

※刑事コロンボ。(「ミドルエッジ」より)

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ISAWO BOOKSTORE× オメガ東京提携公演
「母の法廷」
作・演出:高橋いさを
●出演
中村まり子/月影瞳/鳳恵弥/永池南津子 
●日時
2019年4月2日(火)~7日(日)
●場所
オメガ東京
●料金
¥4000(前売り・当日とも)
●チケット予約
以下のURLよりチケットを承ります。

ご来場を心よりお待ち申し上げます。