1986年、メジロラモーヌ。2003年、スティルインラブ。2010年、アパパネ。
 
秋華賞制覇で史上4頭目の『牝馬3冠』を狙うジェンティルドンナ。
 
 
父ディープインパクト。達成すれば史上初の父娘『3冠馬』の誕生だ。
 
ヴィルシーナに5馬身差をつけたオークス。2分23秒6のレコードタイムは、ダービー・ディープブリランテの2分23秒8を上回った。
 
牝馬同士では、別格の強さを見せつけたジェンティルドンナ。
 
秋華賞トライアル・ローズSは2着ヴィルシーナに1馬身半の差をつけ勝利。

万全の状態で秋華賞、『3冠』獲りに向かう。
 
 
 
 
桜花賞2着、オークス2着。ジェンティルドンナの2着に甘んじてきたヴィルシーナ。
 
同じディープインパクト産駒。
 
秋こそは・・・・・・、逆転の思いで臨んだローズSもジェンティルドンナに1馬身半差、及ばなかった。
 
このまま秋華賞でも2着に敗れれば、3冠すべて2着。
 
嬉しくもない記録をつくってしまうことになる。
 
 
まざまざと見せられた実力差。ジェンティルドンナに勝てない現実は消しようのないものだ。
 
悔しければ強くなれ!
 
それもわかっている。
 
すべてわかった上で、それでも勝ちに行くしかない! ヴィルシーナ。
 
 
 
 
桜花賞3着、オークス4着、アイムユアーズ。
 
父ファルブラヴ、母父エルコンドルパサー、ともにジャパンカップ優勝馬。
 
だが、
 
芝1400m、ファンタジーS1着、フィリーズレビュー1着。
 
芝1600m、阪神ジュベナイルフィリーズ2着、桜花賞3着。
 
得意距離は短距離。
 
 
夏の札幌、クイーンS・芝1800mで古馬牝馬を破って勝利。
 
秋華賞、芝2000m。あと200m延長も凌いで見せるか?根性娘。
 
 
 
 
500万下・1000万下、条件特別を連勝してきたハワイアンウインド。
 
父キングカメハメハ、母ライクザウインド。祖母はディープインパクトの母ウインドインハーヘア。
 
覚醒したか?ディープインパクトの姪。
 
 
 
 
オークスでは1番人気となったミッドナイトサマーフェア。
 
父タニノギムレット、母父キングマンボ。
 
オークスは13着と敗れたが、クイーンSでアイムユアーズの0.1秒差3着。
 
オークス1番人気となった潜在能力を発揮するか?
 
 
 
 
1600万下条件馬ながら、『下剋上』を狙う後方一気の切れ味アロマティコ。
 
チューリップ賞勝ちが忘れられない切れ者ハナズゴール。
 
紫苑S、パララサルーの2着で出走権利を獲ったブリッジクライム。
 
 
『打倒 ジェンティルドンナ』が、すべての牝馬の合言葉。
 
 
 
10月14日、秋華賞。
 
1.ヴィルシーナ
2.アロマティコ
3.ブリッジクライム
4.ハワイアンウインド
5.ラスヴェンチュラス
6.チェリーメドゥーサ
7.トーセンベニザクラ
8.キャトルフィーユ
9.ダイワズーム
10.ハナズゴール
11.サンシャイン
12.アイスフォーリス
13.メイショウスザンナ
14.ジェンティルドンナ
15.ミッドサマーフェア
16.サトノジョリー
17.アイムユアーズ
18.オメガハートランド
 
 
1番人気ジェンティルドンナ、2番人気ヴィルシーナ、3番人気アイムユアーズ。
 
4番人気ハワイアンウインド、5番人気ミッドサマーフェア。
 
 
ゲートが開くとともに、押して、押して、前に出たのがヴィルシーナだ。
 
逃げ馬不在のレース。
 
 
好位策でジェンティルドンナに差され続けたヴィルシーナ。
 
だからといって、ジェンティルドンナの後ろから行って、差し切れる相手じゃない。
 
ならば、
 
できる限り前で離す・・・・・・逃げるしかない、か!
 
 
鞍上・内田博幸は気迫を見せて、1コーナーへ向けて先頭に立ったヴィルシーナ。
 
 
ペースは落ち着きを見せた。3ハロン、36秒5。
 
スローペースに持ち込んだヴィルシーナ。
 
 
2番手につけたのはメイショウスザンナ、3番手アイスフォーリス、キャトルフィーユ。
 
6番手から気を窺うアイムユアーズ。
 
その一列あと、中団外につけたのがジェンティルドンナだ。
 
 
後ろでマークするように進むアロマティコ、ミッドサマーフェア、ハナズゴール。
 
最後方に固まったブリッジクライム、サトノジョリー、チェリーメドゥーサ。
 
 
 
淡々と進むペースを一気に変えにかかったのが、15番人気チェリーメドゥーサだ。
 
ディープインパクトと戦った皐月賞2着、ダービー3着、菊花賞4着、シックスセンス産駒。
 
 
スローペースを利用して、向こう正面、最後方から勝負に出た。
 
一気に駆け上がり、ジェンティルドンナを抜き、アイムユアーズを交わし、ヴィルシーナも抑え、先頭に立った。
 
それだけではないッ。
 
ドンドン差を開き、3コーナーでは後続に8馬身の差をつけて逃げた。
 
 
騒然とする場内。
 
 
ヴィルシーナ、内田博幸の心中は穏やかではない。
 
チェリーメドゥーサを追いかけるのは、2番手となったヴィルシーナの役目か?
 
 
だが、
 
ペースを速めれば、ジェンティルドンナの餌食。
 
 
じっと押し黙ったヴィルシーナ。
 
 
ただ1頭、6馬身の差をつけて直線に姿を見せたチェリーメドゥーサ。
 
 
後続が一団となった。
 
チェリーメドゥーサを追った!
 
 
外から一気、チェリーメドゥーサを追う一番手に上がったのは、ジェンティルドンナだ!
 
『3冠』へ!
 
 
突然、レースをかく乱したチェリーメドゥーサ。
 
想定外でも、ねじ伏せるしかないッ。
 
炎の差し脚を繰り出した!
 
 
後方から、ジェンティルドンナに追随して差し脚を伸ばすアロマティコ、ブリッジクライム!
 
 
もう1頭、
 
内から懸命の差し脚を伸ばす、
 
ヴィルシーナだ!
 
 
チェリーメドゥーサを追っかけまい、直線勝負だ!
 
腹をくくった鞍上・内田博幸。
 
 
全力勝負。
 
 
ジェンティルドンナとともにチェリーメドゥーサを追った!
 
 
勢いはジェンティルドンナ!
 
わずかながらもヴィルシーナの前に出た。
 
 
2頭の死闘の始まり。
 
ゴール前で、力尽きたチェリーメドゥーサをとらえ、一瞬で交わし去り、
 
なおも並んでゴールをめざすジェンティルドンナ!ヴィルシーナ!
 
 
わずかにクビ差、前にいるのはジェンティルドンナだ!
 
 
やはり、強いジェンティルドンナ。でも、このままでは、このままでは・・・・・・。
 
勝てないッ!
 
 
ヴィルシーナの心の叫び。
 
勝ちたい、勝ちたい、勝ちたいッ・・・・・・ヴィルシーナの心臓が、体が、脚が、応えた!
 
 
一完歩、一完歩、ほんの少しずつ、追い詰めたヴィルシーナ。
 
 
ジェンティルドンナ、ヴィルシーナ、馬体がピッタリ重なった時、
 
 
そこがゴールだった。
 
 
長い写真判定。
 
 
結果は、7㎝差。
 
 
ジェンティルドンナは『牝馬3冠馬』となった。
 
ヴィルシーナは、3冠すべて2着。『世紀のシルバーコレクター』となってしまった。
 
 
1着ジェンティルドンナ
ハナ
2着ヴィルシーナ
1馬身半
3着アロマティコ
半馬身
4着ブリッジクライム
ハナ
5着チェリーメドゥーサ
 
 
(つづく)