夢のグランプリ、有馬記念。
最も勝利に燃えるのはブエナビスタだ。
1着アンライバルド(皐月賞)、2着リーチザクラウン(ダービー2着)、4着スリーロールス(菊花賞)、『伝説の新馬戦』の1番人気3着馬。
ただならぬ運命に身を投じることを予見されたかのような、そんな新馬戦だった。
未勝利戦を勝ち、いきなり阪神ジェベナイルフィリーズを制覇。『2歳女王』となったブエナビスタ。
3歳、チューリップ賞を勝ち、桜花賞・オークス制覇、『牝馬2冠』となった絶対女王。
順風満帆で行かないのが競馬の世界。
夏の札幌記念でヤマニンキングリーの2着。古馬牡馬相手にクビ差。
決して、憂うべき結果ではなかった。
だが、
ここから狂った歯車。わずかに、わずかに・・・・・・。
秋華賞、ハナ差レッドディザイアに負けた2位入線。
桜花賞・オークス、ブエナビスタの2着に敗れたレッドディザイア、乾坤一擲(けんこんいってき)の出し抜き勝利だった。
なおかつ、3位入線ブロードストリートの進路妨害として屈辱の3着降着。
エリザベス女王杯。クイーンスプマンテ・テイエムプリキュアの大逃げ・大駆けの前に、上がり32秒9の脚で追い込むも3着。
初の古馬混合G1、有馬記念。当然、勝つ気で臨んだが、ドリームジャーニーの2着。
4歳古馬となり、2月・京都記念を勝ちドバイへ飛び、3月・ドバイシーマクラシック2着。
5月・ヴィクトリアマイル、牝馬G1は勝つも、6月・宝塚記念はナカヤマフェスタの2着。
10月・天皇賞秋はペルーサ以下に完勝。
ようやく勝った牡馬混合G1。
ジャパンカップでG1連覇してこそ、『強い強い牝馬』として、ウオッカ・ダイワスカーレット肩を並べられる。
いや、超えなくてはならない。そのためにも・・・・・・。
11月・ジャパンカップ、『黄金世代』のローズキングダム、ヴィクトワールピサに1馬身4分の3差をつけて1着入線。
またしても進路妨害で2着降着、再びの屈辱だった。
『強い強い牝馬』として、ブエナビスタの戦績は揺るぎなきものだった。
ブエナビスタの中にあるもの・・・・・・勝ち続ける『強い強い牝馬』。
孤高の牝馬には、『勝つこと』が運命だった。
『伝説の新馬戦』3着で得たもの・・・・・・勝たなくてはいけないッ。
それが、ブエナビスタの闘争本能。
有馬記念、相手は3歳『黄金世代』。
ローズキングダム、ヴィクトワールピサ、ペルーサ、ダノンシャンティ、エイシンフラッシュ、ルーラーシップ、トゥザグローリー。
ヒルノダムールを除いた、ダービー以来に結集した『強い強い3歳馬』。
1頭で対するブエナビスタ。
ドリームレースは、過酷な戦いだった。
それも、運命。
(つづく)