2010年、最初のG1、『ダート王』を決めるフェブラリーS。
前年のジャパンカップダートを制したエスポワールシチー。
ダート10戦8勝、2着1回。唯一の着外は前年のフェブラリーS4着。
かしわ記念、マイルチャンピオンシップ南部杯、ジャパンカップダートとダートG1・3連勝中。
サンデーサイレンス産駒として、唯一ダートG1を制したゴールドアリュール。産駒初のG1馬がエスポワールシチーだった。
ダート9戦7勝。フェブラリーSを含めG1・4勝、『ダート王』として君臨した父ゴールドアリュール。
その父を超えるべく、芝7戦1勝からダートに変更、一気に駆け上がった『ダート王』への道。
エスポワールシチーにとって、フェブラリーS制覇は父を超えるための、夢の壁だった。
募集価格1200万円。500口、一口2.4万円。比較的安価な一口価格で知られる優駿ホースクラブ愛馬会の持ち馬エスポワールシチー。
個人馬主にはなれない庶民のささやかな夢、それが一口馬主。一人ではない、500という数の夢を担って走る。
エスポワールシチーを選んだ人の多くが期待した、父ゴールドアリュールの偉大さ。
だからこそ、父のためにも、がんばる!一歩でも近づくために・・・・・・それが、エスポワールシチーの走る原動力だった。
そして、父を超える時が、来たのか?
新馬戦からダート4連勝。ダート・エリートだったサクセスブロッケン。
カネヒキリの前に負け続け、前年、フェブラリーSで雪辱を果たした。
『ダート王』への道を突っ走るか!
思われたが、8カ月に及ぶ休養。
マイルチャンピオンシップ南部杯2着、武蔵野S10着。
中央マイルG1連覇を狙ったジャパンカップダートでは、同期エスポワールシチーの前に4着と敗れた。
逆転された世代№1ホースの座。
年末の東京大賞典でヴァーミリアンに勝利し、G1・3勝目。
同期エスポワールシチーに挑戦状を叩きつける。
ジャパンカップダートで2着シルクメビウス、3着ゴールデンチケット、レベルの高さを見せた3歳勢。
4歳古馬となって、新たな顔で世代交代に挑む。
新馬戦から芝で5戦1勝、ダートに変わり3連勝でジャパンダートダービーに勝ち、G1制覇を果たした外国産馬テスタマッタ。
その後連敗し、喉の病気・喉頭蓋エントラップメントを発症していることが発覚、手術、休養。
1月、復帰戦となる川崎記念はヴァーミリアンの3着。
万全の体調で初中央G1、エスポワールシチーに挑戦だ。
ユニコーンS2着、ジャパンダートダービー4着、レパードS9着。
世代間の中で敗れ続けたグロリアスノア。
2005年に、アメリカから日本へやってきた種牡馬プリサイスエンドの初年度産駒。母父ジェイドロバリーからも、ダートならではの馬だった。
1月、根岸Sを11番人気で、中団から直線一気の差し脚を決め、重賞初制覇。
何かをつかんだか? 若さで挑む。
クラシックも、ジャパンカップも、有馬記念も、載冠できなかったリーチザクラウン。
逃げなければならない気性が敗因、2000mを超える距離が敗因・・・・・・取りざたされた。
マイル路線で・・・・・・決められた方向性。
そこに芝・ダートの区別はなく、リーチザクラウンがG1獲りに出たのがフェブラリーSだ。
芝からダート初挑戦、NHKマイルカップ2着のレッドスパーダ。
父は芝の『マイル最強馬』といわれた外国産馬タイキシャトル。ダートでも3戦3勝だった。
1月、ニューイヤーS(オープン)、東京新聞杯(G3)を連勝し、勢いに乗ってダート・マイルG1制覇を目論んだ。
全日本2歳優駿を4連勝で勝ったダートのスプリンター、スーニ。
フェブラリーSの覇者アグネスデジタルを父に持つケイアイテンジン。
6歳、芝スプリントG1・2勝ローレルゲレイロ。
7歳、芝マイルチャンピオンシップ2着2回、スーパーホーネット。
6歳、芝ヴィクトリアマイル4着ザレマ。
芝の実績馬の挑戦が相次いだ。
2月21日、フェブラリーS。
1.ダイショウジェット
2.ケイアイテンジン
3.テスタマッタ
4.エスポワールシチー
5.スーパーホーネット
6.サクセスブロッケン
7.トーセンブライト
8.レッドスパーダ
9.ザレマ
10.オーロマイスター 出走取消
11.スーニ
12.グロリアスノア
13.ローレルゲレイロ
14.リーチザクラウン
15.ミリオンディスク
16.ワイルドワンダー
1番人気エスポワールシチー2番人気サクセスブロッケン、3番人気レッドスパーダ。
4番人気リーチザクラウン、5番人気テスタマッタ。
単勝1.7倍、圧倒的な人気を得たエスポワールシチー。
はたして、逃げるのか?
ゲートが開いて、外から、ハナを制したのは、芝の『スプリント王』ローレルゲレイロだ。
同じく芝馬レッドスパーダが2番手。
3番手エスポワールシチーに続いたのは、ケイアイテンジン。
接近するダイショウジェット、密集の外から上がってきたのはサクセスブロッケン。
リーチザクラウン、スーパーホーネット、中団前につけた。
その最内を行くテスタマッタ。
後方から行くグロリアスノア、スーニ。
ワイルドワンダー、最後方ミリオンディスク、一団の馬群が続いた。
4コーナーへ向けて、3馬身離してハナ切るローレルゲレイロ、
エスポワールシチーが2番手へ上がってきた。
さらに、3馬身離れてレッドスパーダ、サクセスブロッケンが並び、
馬群が続いた。
流れるように直線に入り、一気に詰まる馬群。
直線、懸命に粘るローレルゲレイロ。
満を持して、先頭に立ったのはエスポワールシチーだ!
外から追いかけるサクセスブロッケン!
内ピッタリから押し上げてきたのは、テスタマッタ!
5歳馬の意地か!
4歳馬、若さの爆発か!
鬩ぎ合う2着争い。
後方では、粘るローレルゲレイロに襲いかかる4歳、
ケイアイテンジン、グロリアスノア!
すべて、敵ではなかった。
先頭に立って、後続を引き離したエスポワールシチー。
心で並走していたのは、まだ見ぬ父ゴールドアリュール。
父を超えるべく、ゴールへ向かった。
テスタマッタがサクセスブロッケンを振り切り、前をを追った、が、
遠かったエスポワールシチー。
鞍上・佐藤哲三が、勝ちを意識して手綱を緩めても、
エスポワールシチーのスピードは止まらなかった。
1着エスポワールシチー
2馬身半
2着テスタマッタ
3馬身半
3着サクセスブロッケン
5馬身
4着ケイアイテンジン
1馬身半
5着グロリアスノア
(つづく)