2010年に羽ばたこうとする2歳若駒たち。
クラシックをめざす、熾烈な戦いはすでに始まっていた。
その中で、ひとつの伝説が終焉を迎え、新たな伝説をつくろうとしていた。
ひとつの伝説、それは『薔薇一族の悲願』だった。
フランスから繁殖牝馬として日本にやって来たローザネイ(バラの妖精)。そこから派生した一族。
ロゼカラー(バラ色)重賞1勝、G1・5,4,3,13着。
ロサード(バラ色の)重賞5勝、G1・9,9,6,11,16,8,9,7,12,14,8,13着。
ローズバド(バラの蕾)重賞2勝、G1・2,2,2,8,5着。
ヴィータローザ(バラ色の人生)重賞3勝、G1・7,12,7,11着。
ローゼンクロイツ(バラ十字軍)重賞3勝、G1・9,8,3,13,11,15着。
ローズプレステージ(バラの名声)、G1・7着。
重賞14勝、G1挑戦33戦。ローズバドがオークス、秋華賞、エリザベス女王杯、3連続G1・2着とあと一歩に涙を呑んだ。
ロサードは7歳までG1・12度の挑戦し続けた。負けても負けても、あくなき挑戦。
ローゼンクロイツはディープインパクトの菊花賞3着馬。脚部不安に苦しみながら走り続け、2008年5月、金鯱賞、第3コーナーで左第1指関節脱臼、発症。予後不良。夢半ばにして逝った。
そして、ローズバドの第3仔として登場したのがローズキングダム(バラの王国)だ。
父はキングカメハメハ。母父サンデーサイレンス。
10月、新馬戦で1番人気ヴィクトワールピサを破りデビュー勝ち。
11月、東京スポーツ杯2歳Sを、2着トーセンファントムにアタマ差勝利。
クラシックの距離を考えてラジオNIKKEI杯2歳Sに出走予定だったが、朝日杯フューチュリティSを狙っていた同厩のリディルの骨折もあって、一族悲願のG1制覇へ方向転換。
12月、朝日杯フューチュリティS。中団から直線鋭く伸び、エイシンアポロンに1馬身4分の1の差をつけ勝利。
『薔薇一族の悲願』であるG1制覇を果たした。
2歳にして一族の悲願を達成。
クラシックでは『バラの王国』・・・・・・新たな伝説をつくる。
ローズキングダムは野望に燃えた。
新馬戦でローズキングダムの2着に敗れたヴィクトワールピサ。
半兄に安田記念勝ちのアサクサデンエン、天皇賞秋2着のスウィフトカレントがいる良血。父はネオユニヴァース。
ローズキングダムに敗れた後、未勝利戦、京都2歳S、ラジオNIKKEII杯2歳Sを3連勝。
鞍上は武豊。ローズキングダムと並ぶクラシック候補となった。
まだまだ新馬戦を勝ったばかりだが、エアグルーヴの仔ルーラーシップや、関東、美浦・藤沢厩舎のゼンノロブロイ産駒ペルーサ。
素質を感じさせる大物候補が年末に現れ、クラシック戦線の華やかさを予感させた。
牝馬においては、新馬戦3着後、未勝利戦、赤松賞、阪神ジュベナイルフィリーズ、3連勝で『2歳女王』となったアパパネが、1頭抜けた存在となった。
『黒、青袖、黄鋸歯形』、ディープインパクトでますます有名になった金子真人氏の勝負服。
前年の女王、ブエナビスタのような凄みある強さは見せないが、安定感のある差し脚は、『女王』の貫禄を見せていた。
2010年、新たな年へ。
新たな戦いは始まる。